第317章 自分に厳しくあってこそ本物の実力

藤原秘書は言葉を失っただけでなく、完全に後悔していた。

あらかじめわかっていれば、夫人の甘い言葉と脅しに負けて、彼女をホテルに連れてくるなどしなかっただろう。

昨夜、相手は明確に不可能だと言い、魚死して網を破るという決意を隠さなかったのだ。

だから彼の上司も、今後彼らを煩わせないと約束するしかなかった。

それなのに彼はすぐに上司の言葉を裏切り、夫人を連れて再び彼らを煩わせに来た。明らかに不可能なことなのに、どうして夫人の「今日はもっと強力な切り札がある、必ず成功する、成功したら母子揃って彼を粗末にしない」という言葉を信じてしまったのか？

これで良かった、物事は成し遂げられず、相手の上司への恨みはさらに深まった。彼が戻ったとき、上司にどう説明すればいいのだろうか？

遠山陽介は藤原秘書が黙ったのを見て、もう彼を見る気にもならなかった。そもそも人間と犬には話すことなどない。

夏目初美に向かって言った。「初美、耀兄さんを中に連れて行って水でも飲ませて、休ませてあげて。残りのことは俺に任せて、すぐに片付けるから」

初美も工藤希耀が怒りで体を壊すのを恐れていた。

今、藤原秘書が上がってきたからには、彼は今日西園寺夫人母娘のためにこの一切を手配したとはいえ、彼の「主人」はまだあの老人であり、あるいは彼は今でも老人を代表できる立場にある。

だとすれば、西園寺夫人母娘はこの「御前大宦官」の言葉を少しも気にしないわけにはいかないだろう。

残りのことを陽介に任せれば、確かに処理できるはずだ。

そこで頷いて、「わかったわ、お兄さん。じゃあ引き続きよろしくお願いします。朝食を注文して待ってるわ。ついでにフロントに頼んでホテルの責任者に来てもらって、私が彼らを訴えると決めたことを伝えるわ！」

陽介が承知したのを確認すると、希耀の手を引いて中に入ろうとした。「行きましょう、あなた。まずは身支度を整えましょう。朝早くから汚いものを浴びせられて、本当に縁起が悪いわ。しっかり洗い流さないと」

しかし西園寺夫人は突然前に飛び出し、さらに図々しく希耀の片足にしがみついた。「行かせないわ！今日はあなたが承諾しない限り、絶対に行かせないって言ったでしょう...今日は徹底的に無礼を尽くすわ。どうせ私はもう命も惜しくないんだから、面子なんて何の価値があるというの？」