第322章 確かに約束を果たしている

遠山陽介も忙しく助け舟を出した。「そうですよ、耀兄さん。お母さんだって、あなたが毎日見知らぬ人のために不幸になって、それが自分の生活や将来に影響するのを望まないでしょう。彼女は一生苦労してきましたが、あなたがいるからこそ、どんな苦労も厭わなかったと思います。私の母もそうでした」

「お母さんは旅立つ前に、きっと全てを手放したんですよ。愛も憎しみも。唯一の願いは、あなたがしっかり生きていくことだったはずです。その願いを裏切るわけにはいきません。明日帰ったら、子作り計画を始めて、お母さんに早く孫の顔を見せてあげましょう。私も早く叔父さんになりたいですし」

夏目初美は言葉を口にした途端、陽介の前で「子連れ」なんて言うべきではなかったと後悔した。

しかし今はそんな細かいことを考える時ではない。

幸い陽介は期待に満ちた目で希耀を見つめており、余計なことを考える余裕はなさそうだった。

初美も気を取り直し、希耀を見つめながら言った。「あなた、私と兄さんがこんなに説得しているのに、いつまで黙っているつもり?まさか私たち二人合わせても、あのろくでもないおやじより軽いってこと?」

工藤希耀はついに笑みを浮かべた。「初美、何言ってるんだ。あいつはお前たちの髪の毛一本にも及ばない。比べるまでもない。わかったよ、二人の言う通りにする。ここまでにして、帰ったらこの二日間のことは忘れる。きれいさっぱり忘れて、自分の生活や仕事に影響させない」

「でも条件がある。あいつが二度と私を煩わせないこと。あいつの周りの誰一人として私に関わってこないこと。あいつの周りの連中の性格を考えると、本当にそれが可能だと思うか?俺は信じないね。あいつらは絶対また何かやらかすよ。今日だってあいつは止められなかったじゃないか」

初美は躊躇いながら答えた。「そこまでしないと思うわ。今日は彼も予想外で、油断していただけ。でも今日の件があった以上、同じことを繰り返させるとは思えない。彼にはそれだけの力があるはず。約束した以上は、必ず守るでしょう」

陽介も言った。「耀兄さん、私も彼が約束した以上は必ず実行すると思います。どうやるかは彼次第で、私たちは結果だけ見ればいい。もし彼が守れないなら、その時に対応を考えても遅くありません」