第321章 これで終わりにしよう

夏目初美はほっと息をついた。「それならよかった。私と兄さんはずっと心配していたの。あなたが怒りに任せて何をするか分からなかったから。幸い、まだコントロールできる範囲内だったわね。それで?彼は本当にあなたの言うことを聞いて、手を止めたの?自分にもう一刀入れることを諦めたの?彼も痛みや死を恐れているのね」

工藤希耀は首を振った。「最初は聞く耳を持たなかった。まだ自分に一刀入れようとして、確かに母さんに借りがあるから、とっくに返すべきだったと言っていた。俺がそれを許すわけがない。彼が母さんへの借りをその一刀で返してしまったら、より一層心安らかになれるじゃないか。わずかに残っている罪悪感も完全に消えてしまう」

「彼は一生罪悪感を抱えて生きるべきだ。一生良心の呵責に苦しみ、死ぬまで安らかな気持ちになど絶対になれないようにしてやる!」

初美は重々しく同意した。「その通りよ。皮膚の傷の痛みなんてどれだけ続くというの?彼には母さんへの借りを永遠に抱えさせ、彼のせいで若い女性が人生を台無しにされ、最後には命まで失ったことを永遠に忘れさせないようにしなければ!」

希耀は冷笑した。「彼は多分、今後彼自身と彼の周りの全ての人間が俺に迷惑をかけないと約束し、自分に一刀入れれば、全てが帳消しになると思っているんだろう。世の中にそんな都合のいいことはない!彼に死ぬまで罪悪感を抱かせ、刃を受けさせるのは、ほんの第一歩に過ぎない」

「君子の復讐は十年経っても遅くない。これからじっくりと彼との勘定を清算していくつもりだ。俺が先に彼を探し出さなかったのは、母さんの遺志に従っていたからだ。彼の方から俺を探してきたんだから、もう遠慮する必要はない。彼だって永遠に高い地位と権力を持ち続けるわけじゃない。待っていればいい!」

初美はそれを聞いて眉をひそめた。

彼女はもちろん希耀が憎しみの中で生き続けることを望んでいなかった。彼自身が幸せになれないだけでなく、その憎しみによって自分自身も傷つく可能性があるからだ。

結局のところ、相手は確かに高い地位と権力を持っている。将来引退したとしても、痩せたラクダでも馬より大きいということわざの通り、まだ相当な力を持っているだろう。

そして老人に死ぬまで罪悪感を抱かせると言っても、良心と道徳で縛られるのは、元々良心と道徳を持っている人間だけだ。