西園寺夫人は夏目初美の言葉に顔色を変え、沈黙した。
確かに彼女は佳成の母親であるだけでなく、娘や孫娘、外孫たちもいて、皆同じ血を引いている。
しかし、佳成だけが彼女の人生で最大の頼りなのだ。
同様に、佳成が生きていて、佳成が元気になってこそ、彼女の娘や孫娘、外孫たちもより良い生活ができる。
だから息子を救うためにどんな代償を払っても何が悪いというのか?
西園寺夫人は再び静かに口を開いた。「あなたたちが昔のことを持ち出すなというなら、もう言わないわ。でも私は息子を救わなければならない。たとえ命を懸けてでも救うの。それとも、本当に私を殺してくれる?私を殺して恨みが晴れるなら、そのあと息子を救ってくれるなら、私は本望よ」
そして今まで黙って背景に徹していた二人の娘、西園寺佳未と西園寺佳子に命じた。「あなたたち二人、何をぼんやりしているの?一緒に来させたのは、黙って立っているのを見るためじゃないわ。弟はまだベッドで命の危機に瀕しているのよ、話しなさい!」
佳未と佳子は確かにずっと自分たちを背景だと思っていた。彼女たちには地位と権力のある父親、強力な実家という後ろ盾があり、結婚した夫も当然優れた人物だった。
どこへ行っても、基本的に人々から敬われ、大切にされる存在だった。
西園寺夫人のように姿勢を低くして工藤希耀に頭を下げるくらいなら、命を取られた方がましだと思っていた。
彼女たちは西園寺夫人がこのように哀願するとは事前に知らなかった。知っていたら、絶対に来なかっただろう。
しかし西園寺夫人の目に満ちた威圧と怒りを見て。
そして西園寺夫人の言葉を思い出した。弟が病気から回復し、仕事を続け、父親が引退した後も、彼女たちは良い暮らしを続けられる。
姉妹はついに口を開いた。「人を救うことは七重の塔を建てるより功徳があるというでしょう。弟も無実なのに、助けてあげられないの?今助けてくれれば、将来腎臓の提供者が見つかったら返せばいいじゃない。でもあなたは私たちの家の大恩人になって、富も人脈も手に入れられるし、将来の道もより良くなるわ」
「そうよ、こんな双方にとって良いことなのに、意地を張って台無しにする必要はないでしょう?私たちはもともと同じ血を分けた親戚なんだし、血のつながりがあるじゃない?」