土曜日に起きて朝食を済ませると、夏目初美と工藤希耀はすでに用意していた荷物を持って、車で関口町へと向かった。
気候はすでにかなり涼しくなっていたが、両側の青い山々や緑の木々はまだ鮮やかな緑に輝いていた。
関口町へ続く山道に入ると、道路の両側にはさまざまな名も知らぬ小さな花が咲き乱れ、蝶や蜂が盛んに蜜を集めていた。
見ているだけで心が晴れやかになるような光景だった。
初美は思わず感嘆した。「前回来た時は、こんな花はなかったわね。それなのにたった2、3ヶ月で、こんなに変わるなんて。ある人は帰ってこなかったけど、今は無駄な旅じゃなかったって分かったでしょ?感謝しなくていいわよ、だって私が世界一の妻だもの」
希耀はハンドルを握りながら笑った。「そうそう、僕は前世で銀河系を救ったから、今世でこんな素晴らしい妻を娶ることができたんだね。じゃあ、世界一の妻よ、自分だけ食べてないで、少しは愛する旦那にも食べさせてくれないかな?」
初美は確かにずっとお菓子を食べていた。彼女は乾いた笑いを浮かべて、「あなたはお菓子が好きじゃないし、運転に集中しないといけないと思ったのよ」と言いながら、希耀に牛肉ジャーキーを食べさせ始めた。
夫婦は食べながら話し、道路状況も良かったため、正午前には町にゆっくりと到着した。
希耀の表情からは特に変化は見られなかったが、ハンドルを握る手は明らかに強く握りしめられ、体も明らかに硬くなっていた。
初美は横目でそれを見て、関口町が彼と母親にとって故郷であることを思い出した。どんなに辛く忌まわしい記憶があっても、同時に懐かしい素晴らしい思い出もあるはずだった。
しかし、同時にあの無責任な老いぼれの存在の痕跡もあちこちに残っているはずだった。
当時、彼がここに来ていなければ、彼が別の場所に行っていれば、すべての悲劇は起こらなかったはずだ。
彼女のこの旅は、かえって事態を悪化させる可能性もあった。
しかし、膿が既にあり、しかもどんどん大きくなっているなら、痛みを我慢して切開するしかない。そうすれば回復の見込みがある。
そのまま放置して膿がどんどん増えれば、全身に広がり、二度と治らなくなるだけだ!