夏目初美は頭が痛くなるほど腹が立った。
こんなに厚かましく恥知らずな人がいるなんて?やはり老人が悪くなったのではなく、悪い人が年を取っただけなのか?!
しかし初美は西園寺老夫人の言っていることが事実だということも分かっていた。
もし彼女が頑として立ち去らなければ、警備員にしても、初美自身や法律事務所の他のスタッフにしても、確かに彼女に手を出す勇気はない。後で言いがかりをつけられて、死なないまでも大変な目に遭うのは目に見えているからだ。
初美は仕方なく無表情で西園寺老夫人の向かいに座った。「いいでしょう、まずはあなたが何を言いたいのか聞きましょう。話が終わったらすぐに出て行ってください!でも最初に言っておきますが、私の夫はあなたの大切な孫に臓器移植をすることはありません。どんな条件でも不可能です。私たちを追い詰めれば、皆が不幸になるだけです!」
結局、移植の件以外に、西園寺老夫人が今日訪ねてきた理由が思い浮かばなかった。
工藤希耀はすでに彼の態度をあれほど明確に示したのに、西園寺老夫人に来てもらえば結果が変わると思っているのだろうか?
西園寺老夫人がそんなに尊いとでも思っているのか!
西園寺老夫人はついに笑顔を失った。「私は今日、移植のために来たのではありません。佳成は...もういないのです。たとえあなたたちが移植に同意したとしても、もう手遅れなのです。」
西園寺誠一がもういない?
こんなに早く?
初美は思わず驚き、反射的に藤原秘書を見た。
藤原秘書も小声で言った。「三少は確かにもういません。先々週の週末のことです...」
誠一はすでに病状が末期で、油の尽きたランプのようだった。どんなに心を落ち着け、冷静に向き合ったとしても、あとどれだけ持ちこたえられただろうか?
痛みに耐えながら家族と数日を過ごし、二人の娘を遊園地に連れて行って一日遊んだ後、翌日には倒れてしまった。
その後数日間は、一日の大半を昏睡状態で過ごし、酸素と鎮痛剤だけで命をつないでいた。
それでも長くは持たず、先々週の土曜日の未明、自宅で息を引き取った。享年三十六歳。
初美は前回京都市から戻った後、実は誠一について調べていた。
おそらく軍人出身だったからか、誠一は正義感あふれる顔つきで、その姿勢も凛として、人に信頼感を与える印象だった。