夏目初美はもう少し待ったが、工藤希耀が戻ってくる気配はなく、さらに焦りが募った。
そこで彼を探しに行くことにした。
しかし、急に立ち上がったため、手元の水の入ったコップを倒してしまい、水はすぐに古い机の隙間から引き出しの中へと流れ込んでしまった。
「拭かなきゃ、拭かなきゃ……」
一瞬の後悔の後、初美は慌ててティッシュを取り、引き出しを開けて、手早く水を拭き取り始めた。
この家具は古いとはいえ、それぞれに重要な意味があるのだから、これ以上傷つけるわけにはいかない。
水をほぼ拭き取った後、彼女は引き出しの中の黄ばんだ数冊の本を急いで取り出した。
幸い、あまり濡れていなかったので、ドライヤーで少し乾かせば、すぐに乾くだろう。
初美の手が突然止まった。
今見たボロボロのノートに「希光」という文字が書かれていたような?もしかして希耀の昔の宿題帳?
でも、さっき見た数冊の本は、彼が学校に通っていた時代のものではないようだし……それにこの家は途中で所有者が変わったはずでは?
初美は無意識にノートを近づけてみた。
そこには確かに「希光」という文字が書かれていた。
しかし「希光」は主語ではなく、別の人が主語だった。「今日、希光が笑ってくれた……本当に嬉しくて、どんなに苦しくても疲れても価値があると思った……お母さんも嬉しそうだった、表情は硬かったけど、わかる。」
「希光、おばあちゃんはあなたが嫌いなわけじゃないのよ。お母さんに腹を立てているだけ。しばらくしたら、きっとお母さんを許してくれるわ。だからあなたは安心して、何の心配もなく成長していけばいいの、いい?」
まるで目から鱗が落ちるように、初美は突然これが何なのか理解した。
これは義母が残した、希耀が以前話していた日記ではないか?
なるほど、ノートが明らかに不完全で、紙も黄ばみボロボロで、文字も古く、多くの箇所がぼやけていて、推測するしかないのも納得だ。
初美は少し迷った後、さらにページをめくり始めた。
今や彼女は部外者ではないのだから、義母の遺品を見ても問題ないだろう?