第347章 自ら手を下す必要があるのか?

夏目初美がエレベーターでホテルのロビーに到着した瞬間、心が不意に動いた。

慌ててホテルの回転ドアを見ると、無表情で入ってくる人物は工藤希耀以外の誰でもなかった。

彼女はすぐに小走りで近づいた。「ダーリン、私を迎えに来てくれたの?ちょうどお腹空いてたから、先に食事に行きましょう?」

希耀も一目で初美を見つけ、目の中の冷たさと全身から漂う殺気がようやく少し和らいだ。彼は初美の腕を引っ張り、「大丈夫か?」と尋ねた。

初美は急いで笑顔を見せた。「私の様子を見てよ、何か問題があるように見える?安心して、すごく元気だよ。でも本当にお腹空いてて、土鍋ご飯が食べたいな。行こうよ?さあ行こう……」

希耀の腕を取って歩き出そうとした。

しかし希耀は彼女を引き止めた。「ハニー、先に何か食べに行くか、それとも車で待っていてくれないか。車は外に停めてある、鍵をあげるよ。少し用事があって、終わったらすぐに会いに行くから、どう?」

初美の返事は、周囲の視線も気にせず彼の腰に腕を回すことだった。「ダメよ、何の用事が私より大事なの?今すぐ夫に食事に連れて行ってもらいたいの、待ちたくないの……行こうよダーリン、行こうよ……」

希耀はまだ動こうとしなかった。「本当に用事があるんだ、とても重要な……」

初美は顔を上げて彼の言葉を遮った。「上の階で恨みのある人と共倒れするつもり?……否定しないで、こんな殺気立った様子じゃ、私が何を考えているか分かるでしょ?私が一言も言わないうちに、あなたがこんなに早くここを見つけられたなんて、私はあなたほど賢くて強くないけど、バカじゃないわよ?」

「もう分かっていることを知らないふりするのはやめましょう。そう、彼らはまた来たわ。昨日来たのは年配の方で、息子が亡くなって、王位を継ぐ人がいなくなったから。そして、元凶も来たわ、だって私が……お母さんの日記を写真に撮って彼に送ったから。」

希耀の目には再び抑えきれない冷たさが満ちた。「初美、車で待っていてくれ。最大でも10分で戻るから。安心して、人命は奪わないよ!」