第366章 自覚のない年長者など何の価値もない

昼、林田愛子は病室に残って双葉学明に付き添うことを主張した。

双葉俊哉は、何十年も連れ添った夫婦のことだから、母親は父親と二人きりで話したいことがあるのかもしれないと思った。

——父親は今、聞こえているかどうかわからないし、聞こえたとしても返事はできないだろうが、母親にとっては、それでも心の慰めになるだろう。

それに看護師もすぐに呼べるので、万が一の事態が起きても、母親が対応できないということもないだろう。

だから彼は母親に一緒に食事に行くよう勧めることはせず、代わりに彼女のために軽い食事を注文し、自分は久山葵と一緒に近くの家庭料理店へ行き、夏目初美と工藤希耀を食事に招待して、まずは感謝の気持ちを少し表すことにした。

希耀と俊哉はどちらも献血したばかりだったので、テーブルの上の料理はほとんど血を補い、気を養うものばかりだった。

お酒を飲むことはもちろんできない。

そこで皆はスープで乾杯の代わりとし、まず椀を合わせ、しばらく料理を食べた。

俊哉は真剣な表情で希耀に尋ねた。「義弟、昨日山崎教授を呼んでもらったり、副院長たちにお願いしたりするのに、きっとかなりのお金がかかったでしょう？もちろん、お金は二の次で、人脈や人情が一番大事なのはわかっています。後者については今すぐ返せないし、もしかしたら将来も返せないかもしれない。ただ心に留めておくしかありません。」

「でも、あなたに労力もお金も出させるわけにはいきません。それじゃあまりにも非道です。だから初美に車を一台プレゼントしたいと思います。あなたの車はもう何年も乗っているでしょう？そろそろ買い替え時かもしれません。初美はどんな車が好きなのかな？先に言っておきますが、遠慮は無用ですよ。断られたら、義兄としてこれからあなたに会わせる顔がありません。」

初美は彼の話を聞き終えると、まず希耀を一瞥した。

そして笑いながら言った。「安心して、義兄に遠慮するつもりはありませんよ。じゃあ、アウディのスポーツカーをお願いします。あの車はコンパクトで可愛いし、ずっと好きだったんです。でも買うとなると必要性を感じなくて。だって本当に使う機会がそんなにないから。でも今、天から餅が降ってきたようなものですから、遠慮する必要はないですよね？」