夏目初美は鼻にしわを寄せ、嗔ねるように言った。「何が良い夫の基本素養よ。私は女王陛下だって言ったじゃない?女王陛下の心を勝手に推し量るなんて、『君主の心を窺う罪』で処罰するわよ!」
工藤希耀は思わず笑った。「その罪で処罰されたら、どんな罰があるんだ?今夜一緒に寝かせないこと以外なら、どんな罰でも構わないよ」
初美は軽く鼻を鳴らした。「残念だけど、まさにその罰を与えるつもりだったわ……急かさないで、まだ言い終わってないのよ。でも罰は罰として、今夜本女王があなたの札を引いて、侍寝を命じることもあり得るわよ」
希耀はようやく笑顔を見せた。「それなら納得だ。女王様ご安心を、私はきれいに体を洗って、女王様に最高の体験をお約束します」
「コホン……」
初美は咳払いをした。
それでも我慢できずに彼に尋ねた。「本当に大丈夫なの?たとえ彼が社長の妹の息子を助けたとしても、他にも感謝の方法はあるでしょう。なぜわざわざ自分の会社に引き入れる必要があるの?少しでも彼の経歴を調べたり、もう少し話をしたりすれば、問題点が見えてくるはず。彼を雇うなんて怖くてできないわ」
希耀は言った。「それはわからないな。おそらく彼自身が要求したんじゃないか?社長も断りづらかったのかも。結局、誰かのお金より自分で稼ぐ方がいいからね。聞くところによると、彼はこの半年ほど何度か仕事を探したらしいが、雇ってくれるところがあっても、留置所に入っていたと聞くと、雇ってくれなくなったそうだ」
「彼の弟も同じだ。以前は小さな商売をしていたが、周りの人が何かの拍子に彼が留置所に入っていたことを知り、商売が続けられなくなった。仕方なく仕事を探したが、ずっと適当なものが見つからない。弟の妻も似たような状況だ」
「おそらく何度も壁にぶつかって、簡単ではないことを知り、ようやく仕事の大切さを理解して、大事にするようになったんじゃないか?」
初美は嘲笑した。「今まで一度も仕事を大事にしたことがなく、まともに働こうとも思わず、怠け者で家でぐうたらしていたくせに。今になってやっと大事にすることを知ったの?やっぱり社会の洗礼を受けないとダメなのね」
「でも何だか、この件には問題があるような気がするの。彼のいつもの行動パターンとあまりにも合わない。何か裏があるんじゃないかって感じ」