橋本燃は温井時雄を車に乗せ、彼の手足を調べると、左足首がまるで膨らんだ饅頭のように腫れ上がり、血まみれの傷口が青黒く変色していた。
この傷口を橋本燃はよく知っていた。数日前の夜、田中優菜に引っ張られていた彼女を救うため、温井時雄が墓石で切った傷だった。
しかし、ほぼ回復しているはずのこの傷口がなぜこんなに腫れているのだろう?
「これはどういうこと?もしかして他の蛇に噛まれたの?」
もし彼が赤仏蛇に噛まれていたら、今頃命さえないはずだ。
しかし、他の毒蛇に噛まれた反応もこのようなものではない。
彼は一体どんな毒に侵されているのだろう?
温井時雄の傷口を観察していると、橋本燃は傷口に深い締め付けの跡があることに気づいた。これは傷口が腫れる前に包帯で巻かれていたことを示している。
傷口が急速に腫れ上がったため、深い締め付けの跡ができたのだ。
赤仏蛇を捕まえた時、温井時雄が彼女を押しのけ、赤仏蛇を蹴り飛ばしたことを思い出し、橋本燃は瞬時に理解した。
温井時雄はその時、怪我をした足で赤仏蛇を蹴ったのだ。赤仏蛇が吐き出した毒液が温井時雄の足の包帯に飛び散り、包帯を通して傷口に染み込み、傷口が毒で腫れ上がったのだ。
そして彼はその毒に侵された体で、彼女を引っ張って赤仏蛇の追撃から逃れさせたのだ。
危険から逃れた後、やっと毒液の付いた包帯を解いたのだ。
なるほど、あの時、虎が彼の後ろに潜んでいても気づかなかったのは、彼が毒に侵され、意識が朦朧としていたからだったのだ。
昏睡状態で顔色が青紫色の温井時雄を見つめながら、橋本燃の心には言葉にできない複雑な感情が湧き上がった。
温井時雄はまた彼女の命を救ったのだ。
橋本燃は毒蛇の解毒剤を温井時雄に飲ませ、傷口の上部を包帯でしっかり縛って血液の流れを止め、出血している傷口の処置をした。
「温井社長は大丈夫でしょうか?」沢田慕人が心配そうに尋ねた。
「たぶん大丈夫よ、あなたの怪我を見せて」橋本燃は沢田慕人に服を脱がせ、彼の背中の肩の部分の肉が手のひらほどの大きさでかじり取られ、数センチの皮膚だけがつながっているのを見た。
「傷が深すぎるわ。ここには十分な道具も消毒用品もないから、とりあえず簡単に消毒して包帯を巻くわ。少し我慢して、手術室に着いたらきちんと処置するから」橋本燃は自責の念を込めて言った。