第29章 虎を倒す女

「本当に驚いたよ、君の蛇を捕まえる技術はとても優れていて、私が持ってきたこれらの道具は全く役に立たなかった」沢田慕人は敬意に満ちた声で言った。

「使わなくても、あなたが心を込めたことが、この事への敬意を表しているわ。誰かさんとは違って、何も持たずに来て、役に立たないどころか邪魔になるだけ」橋本燃は前を歩く温井時雄を嫌そうに見ながら言った。

「調子に乗るな。赤仏蛇は最も毒のある蛇の王だ。今や生存数は極めて少ない。それを捕まえようとしても、そう簡単にはいかないだろう」温井時雄は冷ややかな目で橋本燃を見た。

確かに赤仏蛇の数は哀れなほど少なかったが、蛇ヶ岳は神秘に満ち、無限の可能性を秘めた場所だった。

もしかしたら、彼女は毒蛇の王である赤仏蛇を無事に捕まえることができるかもしれない!

橋本燃は温井時雄に言い返さなかった。確信のないことについては、大言壮語するつもりはなかったからだ。

「そんなにたくさんの毒蛇を背負って、さぞ重いだろう。僕が代わりに背負おうか」沢田慕人は思いやりを込めて言った。

「重くないわ、自分で背負うから大丈夫」橋本燃は断った。

これらは全て危険なものだ。万が一転んで壊れ、蛇が逃げ出して彼らを傷つけたら大変だと彼女は心配していた。

「これは晴子の解毒剤だ。しっかり守らなければならない」温井時雄はそう言いながら、橋本燃の背負っていた籠を一気に取って自分の背に背負った。

橋本燃は本来、毒蛇が彼らを傷つけることを恐れていたが、温井時雄がそう言うのを聞いて、籠を取り返そうとはしなかった。

「橋本燃、これは七色花じゃないか?」沢田慕人は懐中電灯で数本の枯れ黄色い草を照らしながら尋ねた。

七色花は毎年夏に美しい七色の花弁を咲かせ、独特の香りを放つ。赤仏蛇はその香りを好み、七色花の下に穴を掘ることが多い。

ただ、七色花の香りは特に調合が難しく、橋本燃は赤仏蛇の好む独特の香りを調合できていなかった。

「七色花ね。赤仏蛇の好む香りを調合できなかったから、素手で蛇を捕まえるしかないわ。あなたたち、私から離れていて。怪我をしないように」

「赤仏蛇には今でも解毒剤がない。一度噛まれたら命を落とすだけよ。冗談じゃないから、早く離れて」橋本燃は真剣な声で言った。