「何だよ、ジョイ医師だって?人の後ろに隠れて盗み聞きする下賤な女、そんな奴の医術が良いわけないじゃない?」
温井詩葉は冷たい目で橋本燃を見つめた。「あなたが本当にジョイ医師なら、今までずっと神秘めかして完全武装していたのに、今はなぜ顔を隠さないの?
私から見れば、あなたはジョイ医師なんかじゃない。ただ兄に未練があって、私の母の世話をする中で学んだ医術のかけらを利用して、ジョイ医師の名を借りて、兄の注目を引こうとしているだけ。
晴子さんの治療を口実に、実際は兄の前で好感度を上げて、また兄と復縁しようとしている。自分の姉の結婚にまで足を突っ込むなんて、本当に下劣極まりないわ。」
橋本燃は温井詩葉の推測に呆れて笑ってしまった。
「私がジョイかどうかは重要じゃないわ。でももしあなたが兄さんに私が松本晴子を治療しないようにさせられるなら、あなたを祀り上げて、毎日朝晩お参りするわよ。」
何が祀り上げるだって?
彼女を死人扱いしているの?
「橋本燃、この下賤な女!私を呪うなんて、ぶっ殺してやる!」温井詩葉は言いながら橋本燃に殴りかかろうとした。
松本晴子はすぐに温井詩葉の手を引き止め、優しく説明した。「詩葉、私は燃が私と時雄の結婚に介入する気はないと信じているわ。そして燃がジョイ医師であることも信じている。
昨日、私はひどい頭痛に苦しんでいたけど、燃が薬を勧めてマッサージしてくれた後、今日は頭痛がずっと軽くなったの。彼女の治療法は本当に効果があるわ。彼女を追い出したりしないで。私はまだ彼女に病気を治してもらって、早く兄さんとの結婚式の準備をしたいのよ!」
松本晴子のこの説明を聞いて、温井詩葉の心の中で橋本燃への嫌悪感はさらに強まった。
橋本燃が兄と松本晴子の間に介入しないということは、藤堂健太が橋本燃を追いかける可能性があるということだ。
それは彼女がさらに見たくないことだった。
藤堂健太は彼女のものだ、誰も彼女から奪うことはできない。
「たとえあなたが本当にジョイ医師だとしても、許可なく私と晴子さんの会話を盗み聞きするなんて、あなたが心の曲がった下賤な女だということの証拠よ。今すぐ私と晴子さんに謝りなさい。」
温井詩葉は陰険で嫌悪感に満ちた目で橋本燃を見つめ、わざと橋本燃の非を探し、謝罪を強要した。