橋本燃はあまりにも疲れていて、ベッドに横になるとすぐに眠りについた。
午前2時、温井時雄が付き添い病室のドアを開け、手には腫れを抑える軟膏と柔らかい布で包まれた氷嚢を持っていた。
橋本燃の数本の指がさらに腫れ上がっているのを見て、温井時雄の目の奥に申し訳なさが浮かんだ。
橋本辰を軟禁して彼女を従わせるなんて、少しやりすぎだったのではないか?
一晩中、温井時雄は優しい動きで橋本燃の手に腫れ止めの薬を塗り、氷嚢を当てたり外したりを繰り返した。何度同じ動作を繰り返したかわからないが、空が徐々に白み始めるまで続け、ようやく立ち上がってソファに横になった。
ソファに横たわった温井時雄はまさに秒で眠りについた。数日間ろくに休めなかった体は瞬時に深い眠りに落ちた。
……
橋本燃が目を覚ましたのは朝の7時だった。明らかに腫れが引いている自分の指を見て少し驚いた。
これまでの経験では、一晩休んだ後、この手はニンジンのように腫れ上がり、硬くなって痛み、曲げる動作さえ難しくなるはずだった。
しかし今朝起きると、手は少し浮腫んでいるだけで、明らかな痛みはなかった。
橋本燃は指をこすりながら、手に塗られているのは彼女が昨夜寝る前に塗ったクリームとは違う滑らかさを感じた。
肌の艶から判断すると、長時間薬が浸透したときにだけ得られる滑らかさだった。
昨夜、彼女は眠りについてすぐに夢を見た。夢の中で彼女と弟は雪の中で遊び、真っ赤に凍えた両手を母親が優しくさすって温めてくれ、彼女はとても温かい気持ちになり、その夢の中にずっといたいと思った。
それは母親が亡くなって以来、初めて母親が彼女の夢に現れたもので、彼女はその温かさに執着していた。
もしかして夢の外で、誰かが彼女の手をマッサージしていたから、母親が手を温めてくれる夢を見たのだろうか?
もしかして松本晴子が温井時雄の前で優しく温和な人を演じるために、彼女の手をマッサージして薬を塗ったのだろうか?
ありえない!
彼女は松本晴子に施した薬には睡眠成分が含まれていたので、松本晴子が真夜中に目を覚まして彼女に薬を塗ったり氷で冷やしたりするはずがない。
となると温井時雄だ!