今回は橋本燃が彼に脚本について話し、役を決めるために会ったのだが、エンターテイメント業界の大手企業のトップである橋本燃から直々にエビの殻を剥いてもらった清水社長は、少し恐縮していた。
「橋本社長、お気遣いありがとうございます!」清水社長は急いで箸を取り、エビを摘んで数口かじった。「味は確かに素晴らしいですね。とても新鮮です。橋本社長が殻を剥いてくださったからでしょうか、このエビは以前より一層美味しく感じます。」
「清水社長がお気に入りなら、もっと剥いてさしあげましょう!」燃はそう言いながら、また手を伸ばしてエビを取ろうとした。
エビに手が届く前に、皿は回されてしまった。
「笑々が好きなんだ」温井時雄は冷たい声で言った。
北方出身の林田笑々は実は海鮮があまり好きではなかったが、時雄が剥いたものは特別美味しく感じた。
時雄にこのような特別扱いをされることで、彼女は非常に面目を施したように感じ、皆で分け合おうという言葉は口にしなかった。
燃は時雄を一瞥し、目の前のカニを見て笑いながら言った。「清水社長、このカニも良さそうですね。私があなたに...」
後の言葉が言い終わる前に、皿がまた素早く回されるのを見た。
「笑々が好きなんだ!」
燃は怒りの目で時雄を睨みつけた。「ウェイター、エビとカニをもう一皿ずつお願いします!」
時雄が彼女に敵対するなら、彼女も最後まで対抗するつもりだった。
VIP個室だったため、彼らが注文した料理はすべて予備があった。
客が物足りなさを感じないようにするためだ!
燃の言葉が終わるや否や、ウェイターは手際よく素早くエビとカニを一皿ずつ運んできた。
燃が堂々と隣の清水社長にエビの殻を剥いているのを見て、時雄は初めてレストランの料理提供の速さを嫌った。
「淘子、悠真、南花、あなたたちも食べて。このカニの味は本当に絶品よ!」燃は言いながら、彼女の隣に座っている数人に熱心にカニを一人一匹ずつ分けた。
カニをもらった田中悠真と須藤南花はすぐにお礼を言った。
「ありがとうございます、橋本社長!」
「みんな家族同然よ。このカニは本当に身が詰まっていて新鮮で蟹味噌もたっぷりだわ。後で持ち帰り用に一人前ずつ包んであげるわね。」
向かいに座っている時雄は、道具を使って丁寧にカニの身を取り出す燃を見て、顔が曇った。