第167章 彼女にとって最善の保護

たった十日ぶりに、また橋本燃が殺人事件に関わるニュースを目にした。しかも今回は動画も真相も証人もある類のものだった。

いつも冷静な高橋俊年の心も、もはや冷静ではいられなくなった。

燃は一体どんな謎の人物に目をつけられたのか、立て続けに何度も殺人の罪を着せられ、彼女を死に追いやろうとしている。なのに彼らは事件の発端を突き止められないでいる。

俊年は一通り分析した結果、安城では温井時雄以外に、ここまでのことができる人物はいないと考えた。

しかし、もし時雄だとしたら、松本晴子は彼の最愛の女性なのに、どうして晴子まで一緒に罠にかけるだろうか?

この仮説はすぐに俊年によって否定された。彼はまず事件の黒幕について考えるのではなく、先に燃を保釈することが急務だと判断した。

俊年が警察署へ向かう途中、見知らぬ番号から電話がかかってきた。

俊年は考えもせずに電話を切ったが、相手はまた掛け直してきた。

これは彼のプライベート番号で、最も重要な数人にしか教えていない。

広告の電話がかかってくるはずがない。

見知らぬ人物から電話がかかってくるということは、相手がわざわざ調べたということを意味する。

番号を見て、俊年は少し躊躇した後、電話に出た。

「私だ、温井時雄だ!」

電話の向こうから時雄の冷たい声が聞こえた。

「もし彼女に生きていてほしければ、保釈するな!」

俊年は携帯を握る手に力が入り、冷たい声で返した。「時雄、私を脅しているのか?私がお前を恐れると思うか?」

「27号飛獅団がどうやって消滅したか、知っているはずだ、高橋参謀。」

言い終わると、電話からは冷たい切断音が聞こえた。

俊年は携帯を握りしめ、わずかに震えていた。表情は長い間変わらなかったが、額には細かい汗が滲み出ていた。

「会社に引き返せ!」

伊藤千恵が亡くなってから、彼はずっと黒幕を追っていたが、誰が殺人犯なのか突き止められなかったのも無理はない。

裏で誰かが異能力を使って人を殺していたのだ。

十年前の27号飛獅団の壊滅的な全滅、彼は直接戦闘に参加していなかったものの、後方指揮将軍の参謀として攻撃戦術とルートの設計を担当していた。

27号飛獅団は、27歳の特別精鋭兵29人で構成されていた。

この29人の特別精鋭は、数千万の兵士の中から厳選された者たちだった。