思いもよらなかったが、温井時雄の軍歴には、このような命の危険に満ちた恐ろしい経験があったのだ。
あの掃討作戦で、もし相手の麻薬王である雷田震が意図的に気まぐれを起こし、一人を生かして報告させることに同意していなければ、時雄もあの恐ろしい迷宮の戦いで戦死していたかもしれない。
「温井同志、あの失敗した掃討作戦は、あなたにとってこの十年来の心の痛みであるだけでなく、私の父にとっても心の痛みであり、彼の軍歴における恥辱です。
父は深い後悔と罪悪感を抱えて自ら辞職を申し出ましたが、組織は彼の一生の軍務を考慮して名誉ある退職を許しました。彼が退職前に一つの願いを持っていました。それは高橋家の子供たちが必ず雷田震の逮捕に関わることでした。
今回も、私たちは九死に一生の覚悟で、雷田震を捕らえ、亡くなった戦士たちや無数の民間人のために復讐することを誓っています。温井同志、あなたには自信がありますか?」高橋為民は力強く言った。
時雄は素早く立ち上がり、為民に向かって標準的な軍礼をし、声は力強く響いた。
「第32799号兵士、温井時雄は高橋将軍に従い、組織から与えられた任務を確固たる信念で完遂します。最後の瞬間まで、決して諦めません!」
為民は頷き、橋本燃に微笑みかけた。「よく言うだろう、戦場では親子が最強、虎を倒すには兄弟が必要だと。団結さえすれば、必ず任務を完璧に遂行できる。君たち二人は離婚したとはいえ、こんなに有能な若者が手を組めば、さらに我々の精鋭部隊が加われば、必ず雷田獅の戦いの恥辱を取り戻せるだろう。」
燃は時雄を一瞥し、優しくも力強い眼差しで為民を見つめた。「私たちは必ず高橋将軍を失望させません。」
「もう遅い時間だ。少し休んでおくといい。ユダ国に着いたら、いつでも戦闘態勢に入れるよう準備しておかなければならない。今はゆっくり休んでおくんだ。」
燃と時雄はファーストクラスの客室を離れ、後方の二等VIP室に向かった。
二等室には六つの座席があり、それぞれのドアを閉めると独立した小さな空間になる。
左側の窓際の二つの座席だけがドアが開いていた。
一目見て燃と時雄のために残されていることがわかった。