「心配しないで、彼は大丈夫よ。ただ喉が少し痛いだけで、一時間後には話せるようになるわ」
橋本燃はそう言いながら、明るい笑顔で小林勝という名の兵士を見つめた。「さて、私が雷田獅の戦いに参加する資格があるかどうか、今ならわかるでしょう?」
小林は不服そうな顔をして、行軍や戦闘は体力と射撃技術が頼りだと言いたげだった。
そんな卑怯な毒の使い方では、敵に近づく前に敵の武器で腹を撃ち抜かれてしまうだろう。
「あなたが何を考えているかわかるわ。本当の戦場では実力が物を言うのであって、毒なんかじゃないって。機会があれば、誰の射撃の方が正確か競い合うのも構わないわよ」
燃は小林の頬を軽く叩きながら、笑い声で言った。「もう21世紀なのよ。女性を軽視するような古い考えは捨てなさい。あなたのお母さんが知ったら家から追い出されるわよ」
燃はそう言いながら、車内の全員を見回した。
彼女の視線が通り過ぎる度に、誰もが思わず目を逸らした。
皆の心の中では、燃は不気味な女だと思い、決して自分の隣に座らないでほしいと願っていた。
まるで全員の心を見透かしたかのように、燃は一番後ろの窓際の席に座った。
「山田睿、あなたは須藤鳴の弟よね。以前、鳴はよくあなたのことを話していたわ。小さいけど大胆で、勇気と知恵を兼ね備えていると。
確かに鳴の言った通り勇敢ね。若くして鷲の団の隊長になるなんて、お兄さんが天国から見ていたら、きっと誇りに思うわ。
十年前、私はあなたのお兄さんや他の戦友たちを裏切ってしまった。十年後の今、必ず雷田震の命を奪い、あなたのお兄さんや無実の死を遂げた戦友たちの仇を討つわ」温井時雄の声は静かだったが、力強さと決意に満ちていた。
「十年も訓練していないのに、足を引っ張らないだけでも御の字だ」睿は冷たく言い放ち、窓の外を見た。
時雄は窓の外を見つめる燃の横顔を一瞥し、睿の隣に座った。
「こんなに席があるのに、なぜ私の隣に座るんだ?」睿は不機嫌そうに言った。
「これは当時出征する時、君のお兄さんが私にくれたお守りだ。今、君に渡したい。お兄さんの力と共に、君を守り続けてくれることを願っている」
時雄はポケットから精巧な五つ星クリスタルボックスを取り出し、睿に差し出した。