「温井時雄、パソコンは私のプライバシーよ。私の許可なく無理やり見るなんて、訴えることだってできるわ」橋本燃は言いながら時雄を外に引っ張った。
力を入れすぎたせいで、体内の龍鳳蝗が彼女の力の使い方を感知し、また発作が始まった。
燃は胸が引き裂かれるような痛みを感じ、思わず冷たい息を吸い込んだ。そして、喉に塩辛い味が込み上げてきた。
燃が血を吐き出さないように必死に抑えている間に、時雄は彼女の力が緩んだ瞬間を見計らって閉じられたノートパソコンを開いた。
それを見た燃は焦りと怒りの中で、抑えきれずに一口の鮮血を吐き出してしまった。
時雄が振り向くと、真っ白なカーペットに広がる赤い血溜まりが目に入り、瞳孔が急激に縮んだ。彼は急いで後ろに倒れかけていた燃を抱きとめた。
「燃、どうしたんだ?」時雄の声は震え、恐怖と緊張に満ちていた。
「大丈夫よ、さっきお酒を飲みすぎただけ。出て行って。薬を飲んで一晩休めば良くなるから」燃は冷静な声で言った。
血を吐くことについて、燃は確かに痛みを感じていなかった。
毎回血を吐くとき、彼女は痛みを感じないが、体がより弱くなっていくのをはっきりと感じることができた。
これこそが龍鳳蝗術が燃にとって不思議で恐ろしいところだった。
痛みを感じさせないのに、体はずっと損傷し続け、いつ命を落とすか分からない。
「今日飲んだ酒は、以前ブライアンと飲んだ量の半分もないだろう。あの時は胃から出血することはなかったのに、今日はビール数本でどうして胃から出血するんだ?」時雄は信じられないという表情で燃を見つめ、まるで威厳のある目で彼女に真実を話させようとしているかのようだった。
彼女とブライアンがどれだけお酒を飲んだかまで覚えているとは思わなかった。
時雄の顔に浮かぶ緊張した表情を見て、燃の心臓が一瞬締め付けられた。
彼がこんなに彼女を心配する日が来るとは思わなかった。
燃、見てよ、あなたの情けない姿を。彼のちょっとした気遣いで光栄に思うなんて。
本当に哀れで悲しいわ。
でも、どうしようもない。彼女は抑えきれない高揚感を感じていた。
「松本羽源に捕まった時、彼に蹴られて胃に穴が開いたの。やっと治ったばかりなのに、また痛みを忘れて。