第187章 世界に異能力など存在しない

「橋本燃、まさか毒で私を殺そうとするとは!お前は私の龍鳳蝗術にかかっているんだぞ。私を殺せば、蝗の王が自爆する。蝗の王が爆発すれば、お前も死ぬことになる!」松本夕子は狂気じみた声で言った。

橋本燃は夕子の残忍さをよく知っていた。この機会を逃さず、即断即決で彼女を殺さなければ、後の計画に夕子が関わることになれば、今回の戦いに参加する戦士たちに計り知れない悲劇をもたらすだろう。

彼女は夕子に解毒してもらうために命を助けるようなことはできない。そうすれば夕子が他の人々を傷つける機会を与えることになる。

自分一人の命と引き換えに、無数の戦士の命を救うことができるなら、それは価値があると彼女は思った。

「何であなたを殺せないことがあるの?あなたはあれほど多くの人を殺し、私は殺し屋・花村燎として、あなたを殺すことは正義を行使し、悪を除くこと。そして、あなたの手によって無実の命を奪われた人々の仇を討つことになる。

あなたのいわゆる龍鳳蝗術についてだけど、よく目を開けて見てごらん。あなたの薬物で変異した虫が自爆したかどうかを」燃は地面に横たわる夕子を軽蔑の眼差しで見つめ、まるで吐き気を催す害虫を見るかのようだった。

「変異蝗虫」という言葉に夕子は怒りで目を見開いた。「嘘つき!それは変異蝗虫じゃない、金剛不壊の体を持つ蝗の王だ!」

夕子はそう言うと、激痛に耐えながら服の中から黒い缶を取り出し、蓋を開けた。中からネズミほどの大きさの変異した蝗虫が素早く飛び出した。

蝗虫が空中に飛んだとき、燃は箸を一本取り、蝗虫に向かって投げた。箸に体を貫かれた蝗虫は夕子の前に落ち、数回もがいた後、黒ずんだ血を流して動かなくなった。

「箸一本で簡単に刺し殺される虫が、あなたの言う金剛不壊の体を持つ蝗の王?」燃は軽蔑的な笑みを浮かべて尋ねた。

燃の顔に痛みの兆候が全くないのを見て、夕子は目を見開いた。

精製に成功して生き残った蝗の王を作るのは非常に難しく、数千万、あるいは億単位の蝗虫の中からたった一匹が生き残るほどだった。そのため、彼らは龍鳳蝗術にかかった人を殺した場合、蝗の王が自爆するかどうかの実験を行ったことがなかった。

ただ異能力を記した書物にそう書かれていたため、彼らは蝗の王が自爆することを深く信じていた。