「燃、あなたの医術はあんなに素晴らしいのに、どうして二年も経ったのに、まだ顔の傷跡を治す薬を研究できないの?」
橋本燃の顔の傷跡を見るたびに、高橋淮陽は心を痛めてそう尋ねた。
彼の心の中では、燃はいつまでも美しく自信に満ち、何でもできる女の子だったが、それでも彼女の顔がきれいで、何の欠点もない状態であってほしいと願っていた。
見た人に「ブス」と嘲笑されるようなことがないように。
「私はただ医術がちょっとだけ良いだけで、神仙じゃないわ。法術をかけて顔の傷跡を消せるわけじゃないの。
それに、こんなに長い時間が経って、もう慣れたわ。これが見えなくなったら、逆に慣れないかもしれない。私のことを心配しないで。
このままで十分よ。人間は完璧じゃないもの。自分のすべての不完全さを受け入れて、毎日を楽しく過ごせばいいのよ」燃はお菓子を食べながら、達観した様子で答えた。
二年前、温井時雄の死を目の当たりにした時、彼女は感情の高ぶりから、傷跡になっていた傷口を引っ掻いてしまった。その後、傷口はひどく痒くなり、悪化していった。
詳しく調べた結果、田中雪満が彼女を傷つけた刀に、非常に奇妙な毒が塗られていたことがわかった。
傷口が完全に治った後に毒が効き始めるのだ。
治った後に皮膚が再び潰瘍化すると、解毒は完全に不可能になる。
皮膚がすでに毒を完全に吸収してしまっているため、どんなに医術が優れていても、解毒薬を研究している間に顔はすでに台無しになってしまう。
高橋青森の絶え間ない研究と治療のおかげで、彼女の顔の傷跡は最小限に抑えられた。見た目は良くないが、人を怖がらせるほどではない。
後から考えると、もし時雄が適切なタイミングで死ななかったら、彼女はあのように狂乱状態にならず、顔が完全に台無しになっていたかもしれない。
だから時雄は死んでもなお、最後の光を放って彼女を救ったのだ。
自分の顔の傷跡について、燃はまったく気にしていなかった。仕事で外出する時も堂々と傷跡を見せていた。重要な場では、他人への配慮からマスクをして隠すこともあったが。
燃が見栄えを気にせず大口を開けて食べる姿を見て、淮陽の目に宿る愛情の笑みはさらに濃くなった。
女の子はこのように自由奔放でリラックスした自然な姿が一番美しい。