第309章 お前は犬か?

「本来なら君は安全防衛局の人間ではないから、この件に口を出す権利はないんだが、君たちは見義勇為だ。積極性を打ち消すわけにもいかない。よし、今日は君の言う通りにしよう!」加藤康はそう言いながら、拡声器を田中黙の手に渡した。

「中にいる者たちに告ぐ。君の条件を受け入れる。だが君たちも私の条件を一つ受け入れてほしい!」黙は拡声器を手に取り、廃工場に向かって叫んだ。

「どんな条件だ?」中から返事が返ってきた。

「一人の女の子を人質として残し、他の九人の女の子を解放しろ!」

「不可能だ!俺をバカにしているのか?人質がいなければ、お前らの思い通りになるじゃないか!」

「我々は人民の利益を何よりも優先する安全防衛局の警官だ。お前たちのような人民の利益を損ない、私腹を肥やす屑とは違う。

お前たちの手にあるのが一人であろうと、どんな国家保護動物であろうと、我々は危害を加えない。

それに、そんなに多くの人質を連れていては逃げるのも不便だろう。一人の人質がいれば、逃げやすいし、車も少なくて済む。追われる可能性も減る。お前たちのことを考えているんだ。」

「ふざけるな。お前らみたいな赤の他人を信じるくらいなら、豚が木に登るのを信じた方がましだ。」

「富は危険の中にある。もし自分の運命を掴む勇気すらないなら、残念だが仕方ない。お前たちが隠れているその廃工場は以前、化学工場だった。

どのケミカルタンクに火がついても爆発する可能性がある。爆発なんて人間の力ではコントロールできないものだ。そうだろう?」

入口で交渉役を務めていた男は、黙が彼らを人質もろとも焼き殺そうとしていることを察し、一瞬慌てた様子で、少し躊躇した後、急いで彼らのボスの前に駆け寄った。

「ボス、どうしましょう?」

彼らのボスは馬田竜也という名で、片目の男だった。筋肉質な体つきで、40歳前後、見るからに凶悪な風貌をしていた。

「俺はこれまで何度も奴らに包囲されてきたが、人質を顧みずに火をつけて焼き殺すなんて、一度もなかったぞ。

奴の言うことを聞くな。ただの脅し…」

竜也の言葉が終わらないうちに、火の玉が中庭の化学タンクに命中した。

瞬時に、タンクに火が燃え上がった。

「ボス、あの赤の他人は嘘じゃなかった!本当に火をつけて俺たちを殺す気だ。どうしましょう?」