雷田さくらは遠くに立っている田中黙を見て、目の奥に一抹の後ろめたさを浮かべた。何か言おうとした瞬間、腰に何かが蹴りを入れたのを感じ、体が制御できずに屋上に倒れ込んだ。
橋本燃と雷田琰は、突然現れた足が雷田さくらを蹴ったのを見て、さくらが顔から地面に落ちるのを恐れ、二人は驚く間もなく、すぐに駆け寄ってさくらを受け止めた。
そして、皆は雷田さくらが橋本燃と雷田琰に同時に受け止められ、さくらの左足が柱にしっかりと縛り付けられているのを目にした。
橋本燃は自分の腕の中にいるさくらが開脚のポーズをとり、片足が高く上がっているのを見て、一瞬呆然とした。
さくらの足には透明なロープが結ばれていた。彼女は本当に自殺しようとしていたわけではなかった。
つまり、さくらはどんな芝居を演じていたのだろう?
以前、さくらの大きなウェディングドレスが柱を隠していたため、彼女は足に何か異常があるとは気づかなかった。
まさかさくらが足にこのような安全策を講じていたとは思いもよらなかった。
安全ハーネスを身につけ、やっとの思いで素手で登ってきた藤原錦一は手すりに座り、柱に縛られたさくらの小さな足を見つめた。
「おいおい、これは凄いな。足だけじゃなく、靴の穴にも透明な糸が通されてて、二重に柱に縛り付けられてる。まるで落ちて粉々になるのが怖くてたまらないみたいだな、小毒...」
彼らを「毒種」と呼んだ山本煜司が琰にあっという間に倒された様子を思い出し、錦一はすぐに怒って言い直した。「このバカ娘、お前は本気で飛び降りようとしてなかったのに、俺は本気で救助してたんだぞ。さっきお前のせいで手を滑らせて落ちそうになったことを知ってるか?こんな人を危険に晒すようなことは、今度からは誰にも見つからない場所でやってくれよ。」
錦一と煜司は田中黙と一緒に屋上に上がった後、屋上周辺の状況を観察し、さくらが抱きついていた円柱の近くに排水口があるのを見つけた。
彼はさくらが気づかないうちに、煜司に安全ロープを排水口から入れさせ、自分は1階から少しずつ上に登った。
さくらが気づかないタイミングで、彼女を屋上に蹴り倒した。
下からさくらを蹴る角度が見つけにくく、音を立てることもできなかったため、救助の際に宙吊りになっていた時間が長すぎて、彼はもう少しで落ちるところだった。