「番組を辞めたくないの?」橋本燃は彼女の顔を見て尋ねた。
温井詩葉はすぐに頷いた。
「じゃあ、私に番組を辞めてほしいの?」
詩葉は無意識に頷き、すぐに首を振った。
燃は詩葉が彼女に対して偏見を持ちすぎていて、心から改めることはないだろうと分かっていた。冷たい声で言った。「番組に参加し続けたいなら、ちゃんと撮影して、才能を練習しなさい。あなたが口を出すべきでないことには、手を出さないで。もう一度あなたが私の前で汚い言葉を吐くのを聞いたら、その美しい金の声は本当にアヒルの声になるわよ」
詩葉は燃の視線に怯え、急いで頷いて同意した。
「頭が良くないなら、先頭に立とうとしないで。一時間後、あなたの声は自然に元に戻るわ。今は出て行っていいわよ!」
燃がそう言うのを聞いて、詩葉は急いで立ち上がり、振り返ることなく走り去った。
詩葉の背中を見つめながら、燃の艶やかな瞳が揺れた。
今日は詩葉が彼女に挑発してきたとはいえ、林田笑々が唆したことは間違いない。
この時、ソファに横たわり、コーヒー色の毛布を頭からかぶって、ソファと一体化していた木村凡が頭を出し、燃に向かって親指を立てて、満面の敬意を表した。
「以前は橋本医師の医術が天才的だと聞いていただけだったけど、今日実際に見て、テレビで見るような不思議な光景が目の前で実際に起こるなんて、本当に感服するわ」
昼食時、凡は燃と一緒に食事をし、二人は食べながら今日の21人の姉さんたちの初舞台パフォーマンスについて話し合っていた。
食事を終えた後、凡は自分の部屋に戻りたくなかったので、燃の休憩室で昼寝をしていた。まさかこんな素晴らしい一幕を目撃することになるとは思わなかった。
燃が人を叱りつける姿にかっこよさを感じた。
「ごめんなさい、見苦しいところを見せてしまって」
凡の前で乱暴に詩葉を追い払ったことに、燃は少し恥ずかしさを感じた。
凡は気品があり、名門の出身で、争いを好まない純粋さを漂わせている。彼女を怖がらせたら良くない。