024 勝山露美も思いもよらなかった

秘書は一瞬固まり、理解した。

これは勝山家の養女を完全に見捨てるということだ。

江口漠遠は目を閉じた。「用がなければ、下がっていいよ」

「江口さん、どうぞお休みください」秘書はドアを静かに閉めた。

外に出ると、彼は首を振った。

以前、江口さんと一緒に清水県に視察に行ったとき、勝山家の養女はまだ純朴だった。今は?

やはり大都会の華やかな誘惑に負けて、落ち着きがなくなり、出世しか考えていないようだ。

江口さんが見抜いてよかった。

秘書は少し考えてから、給湯室に行き、携帯を取り出して電話をかけた。「露美さん……」

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数日の療養で、温井風眠の体調はかなり良くなっていた。

しかし、長年の病気は一朝一夕で治るものではない。

最初の薬はすでに使い切ったので、子衿は特別に新鮮な薬材を注文した。

東京は山から離れているため、薬材はすべて他の地域から取り寄せていた。

彼女が必要としていたのはすべて最高級の薬材で、数十キロで数十万円もかかった。

待っている間、子衿は隣のスイーツショップに入り、マンゴー餅団子を一つ注文した。

彼女は新しく買ったスマートフォンを取り出し、画面を点けると、様々なアプリが表示された。すべて彼女が遊ぶつもりのものだった。

新しい技術の最大の利点は、彼女が退屈しないことだった。

子衿はそのうちの一つのアプリを開き、ウサギの耳がついた自分を見つめながら、考え込んだ。

これは「自撮り」と呼ばれるものらしい。なかなか面白そうだ。

彼女は手元でいじくりまわし、フィルターと装飾を選んでシャッターを押した。

「カシャッ——」

その鮮やかな音に、向かいのテーブルに座っていた人が顔を上げた。

それは日よけ帽とサングラスをかけた少女で、かなり顔を隠していた。

彼女は眉をひそめ、不機嫌そうに言った。「どうして彼女たちはここまで追いかけてくるの?写真を削除させて。私は黒い写真でトレンド入りなんてしたくないわ」

アシスタントは理解し、すぐに前に進み出た。「写真を削除してください。六条さんはファンに撮影されるのを好みません、わかりますね?」

「どうしても撮りたいなら、訴えることもできますよ」

声は大きくなかったが、スイーツショップの客全員に聞こえた。

彼らは皆振り向き、好奇心を示した。