力は非常に軽く、ほとんど無に等しかった。
しかし世界各地を渡り歩く神射手として、その感覚は極めて敏感だった。
わずかな物音でさえ、彼は捉えることができる。
神射手の背筋は瞬時に緊張し、額に冷や汗が滲み、心拍が加速した。
だが結局、彼は振り返った。
弓なりの月が高く、星はまばらに散らばっていた。
冷たい微光が少女の顔を照らし出し、さらに冷たさを増していた。
彼女はスリッパを履いたまま、長い髪も肩に乱れていた。
切れ長の目はぼんやりとして、かすかな霧がかかったようだった。
まるで目覚めたばかりのよう。
しかし神射手の胸はぴたりと止まった。少女の右手に握られているものを見たからだ。
デザートイーグル。
ハンティングガンだ。
彼は普段使わず、バックパックに入れていただけだった。
自分のバックパックが足元にないことに気づいた時、神射手はようやく悟った。目の前の少女が普通ではないことを。
彼は恐怖に駆られた。「お前は…」
「バン!」
勝山子衿は引き金を引いた。手首は一度も後退しなかった。
デザートイーグルが一般に流通していない理由は、その強い反動力にある。
一発撃つだけで、腕の骨が砕ける可能性もある。
たとえ銃を使うのが70キロの大柄な男性であっても。
一人の神射手を始末し、子衿は無表情のまま、微動だにしなかった。
彼女はデザートイーグルを拭き、しまった。
そして神射手が使っていたAS50もバックパックに詰め込み、持ち上げた。
子衿は耳を動かし、足音を聞いた。
振り返りもしない。
手で階段を支え、体を滑らせると、黒い長髪が空中で舞い上がった。
古武者としての豊かな內勁が放たれ、そのまま18階から飛び降りた。
後から来た人が上がってきた時には、屋上にはもう誰もいなかった。
バーテンダーは珍しく呆然とし、頭が真っ白になった。「これは…誰がやったんだ?」
伊藤雲深は連絡を受けて上がってきた後、沈黙に包まれた。
彼の情報は何重にも暗号化されていた。そうでなければIBIでさえ彼を見つけられなかっただろう。
今回は蛇を誘い出すために、わざと情報を流していた。
もちろん、すべてのハンターに流したわけではない。
ただ雲深が予想していなかったのは、この銃神ランキング7位の男が、よりによって今日行動に出たことだった。