106 勝山子衿:お父さんと呼ぶ準備はできた?【3更】

しかし、その二文字は遅かった。

江口燃の右足はすでに中に入り、床に踏み込んでいた。

表情は一瞬で変わり、額に青筋が浮かんだ。

「どうした?」

修斗羽は鋭く異変を察知し、素早くかがんで、もう一方の靴を手に取った。

一目見て、彼女は原因が分かった。

靴の前半分に、びっしりと針が貼り付けられていた。

最も奥の部分にあったため、隠れていて、注意深く見なければ全く気づかない。

燃は歯を食いしばり、一切声を出さなかった。

彼は心臓を刺すような痛みに耐えながら、自ら靴を脱いだ。

白い靴下に、鮮血がはっきりと見え、一滴一滴と落ちていった。

子分は呆然としていた。

幸い更衣室の入り口には救急箱が備え付けられており、勝山子衿はガーゼとはさみを持って近づいてきた。

燃は少し気が進まない様子だったが、それでも一言「ありがとう」と言った。

彼ははさみを受け取り、歯でガーゼの端を噛みながら、自分で包帯を巻き始めた。

羽の目は冷たかった。「誰がやった?」

彼女と燃は幼い頃から反りが合わない幼馴染だが、どんなに仲が悪くても兄弟のような間柄だった。

「違...違います」子分は慌てていた。「誓います、僕は絶対に燃さんを傷つけるようなことはしません」

燃は学校の番長だが、天理を害するようなことはせず、周りの人にも優しかった。

今では更生して、授業も聞くようになっていた。

「お前じゃないのは分かってる」羽は眉をひそめた。「お前がこんなことするわけないだろ。どこから靴を手に入れたんだ?」

「学校の宅配受取所です」子分は泣きそうになった。「燃さん、どうしましょう?この足で試合に出られますか?」

「大丈夫だ」燃はようやく一息ついて、額に汗を浮かべながら冷笑した。「片足だけでも、奴らを叩きのめしてやる」

子衿は120番(救急)に電話をかけ終わると、彼を一瞥して淡々と言った。「病院へ行くわ」

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第一病院。

女医が注射器を持ちながら眉をひそめた。「何から逃げてるの?こっちに来なさい」

「打たない!」燃はどうしても腕を出そうとしなかった。「言っただろ、俺は大丈夫だ、打たない」