一人の名前でもなく、住所でもない。
しかし、これは世界中の財閥や家族を震撼させるに足る名前だった。
和国では、伊藤家や鈴木家を知らない人はいても、根岸家や松本家を知らない人がいても、ローラン家族を知らない人は絶対にいない。
なぜなら、世界中に業務を展開する唯一の国際銀行が、ローラン家族の経営するものだからだ。
ローラン銀行の一日の売上は、他の銀行の一年分をはるかに上回る。
ほぼ世界経済を独占していると言っていい。
ローラン家族の財産がどれほどあるのか、誰も知らないが、国家の富に匹敵するというのは控えめな表現だろう。
箱の送り主を見て、鈴木のご老人と鈴木執事は揃って沈黙に陥った。
しばらくして、鈴木のご老人がようやく顔を上げ、静寂を破った。「ローラン家族って…私たちが知っているあのローラン家族か?」
鈴木執事はまだ夢の中にいるようだった。彼は茫然と「い…いや、まさか」と言った。
ローラン家族とはどんな存在か?
世界第一の名家だ!
鈴木集団どころか、帝都の大豪門を全部合わせても、ローラン家族には及ばない。
ローラン家族が直接彼らの鈴木家に荷物を送るなんて?
噂になれば笑い話だ。
鈴木のご老人も可能性は低いと思ったが、もう一度眉をひそめて見ると、何かを発見したようだった。「待て」
彼はスマホを取り出し、検索欄に「ローラン家族」と入力した。
最初に出てきたのはローラン家族の歴史だった。
ローラン家族は15世紀に興り、18世紀中頃まで、O大陸で最も強力な名門の一つとして、多くの人材を輩出してきた。
ローラン家族はフィレンツェというO大陸の大都市を3世紀にわたって支配し、その数百年の間に、多くの芸術の巨匠たちを支援してきた。
世界中に轟くキノ・フォンという名前の背後には、ローラン家族の支援があった。
ローラン家族がいなければ、キノがどれほど才能があっても、埋もれていたかもしれない。
しかし何らかの理由で、18世紀中後期に、ローラン家族は突然一夜にして没落し、ほぼ完全に姿を消した。
そしてこの100年近くの間に、この古い家族が再び人々の視界に現れた。
そして急速に世界経済の命脈を掌握し、ローラン銀行を世界中に展開した。
ローラン家族の興亡は、今日でも未解決の謎と言える。