彼は一人で来ただけで、助っ人も連れてこなかった。
それどころかスーツ姿で、急いで来たせいか、シャツにはシワが寄っていた。
全く威圧感のない様子だった。
その用心棒たちは皆、大きな場面を経験してきた連中で、集団での喧嘩も何度もやってきた。一言の脅しに怯えるわけがない。
国際手配だなんて、とんでもない冗談だ。
最前列の用心棒たちは無視して、さらに前進した。
傍らで、八木様は眉をひそめ、何かを必死に考えているようだった。
突然、彼は冷や汗を流し、激しく叫んだ。「全員止まれ!止まれ!」
用心棒たちは皆、八木様に従っているので、彼がそう命じれば当然止まらなければならないが、皆が困惑していた。
若い探員はスーツの埃を払いながら、皮肉げに笑った。「何を止めるんだ?さっきまで気勢を上げて人を痛めつけようとしていたじゃないか?さあ、道を開けてやったぞ。まさか私からお願いしろとでも?」
「いえ!私たちはただここを見に来ただけです」八木様は泣きそうな笑顔を浮かべ、言葉に詰まりながら言った。「絶対に他意はありません。今すぐ帰ります!今すぐ帰ります」
この言葉を聞いて、若い探員は顔から笑みを消した。「帰る?本当に、あなたが遊んでいるだけで、IBIも付き合うと思っているのか?」
彼は足元の道を指差した。「恐れることはない。今日あなたが帰っても、私たちはあなたを見つけられる」
八木様の冷や汗はさらに増え、数珠を握る手も震えていた。
彼はどうしても理解できなかった。いつものように方角志成から電話を受け、荷物を確認しに来ただけなのに、まさかIBIに鉢合わせするとは!
IBIとはどんな存在か?
国際犯罪を専門に取り締まる組織だ!
国際的に悪名高い犯罪者だけがIBIの手配リストに載るのだ。
彼は寧川のただの小物に過ぎない。IBIの目に留まり、わざわざ上級探員を派遣する価値があるのか?
八木様は突然、全身が冷たくなるのを感じた。
彼は実際にIBIの探員や国際警察を見たことがあったが、その時彼らが追っていたのは彼ではなかった。
だからこそ、彼はより恐怖を感じていた。
もちろん、今日IBIが派遣したのは上級探員一人だけで、彼にはこの上級探員を留める力はあった。
しかし、そんなことをすれば、彼は本当に死に近づくだろう。