彼女は眉をひそめた。「どうしたの?」
彼女は勝山月咲を連れて帝都大学の教授に会わせに来たのに、月咲がこんなに失態を演じるなんて。
「いえ、何でもないです。ただ驚いただけで」月咲は箸を拾い上げ、微笑んだ。「内山教授が言っていた学生は青葉の生徒で、彼にコンピューターの才能があるなんて意外だったので」
「いやいやいや」内山教授が口を開いた。「彼にコンピューターの才能があるというより、彼はもともと全能型の天才なんです。コンピューター学科の名誉教授だけでなく、他の学科にも行っていますよ」
月咲の笑顔が少しずつ消えていった。
内山教授のこの言葉は、彼女を責めるものではなく、ただの説明だったが、彼女は胸が締め付けられるような気分になった。
ある言葉を思い出した——
あなたたちが90点を取るのは、それが実力だからだ。私が満点を取れるのは、試験用紙が満点までしかないからだ。
本谷茹子はさらに驚いた。「彼は帝都大学に行かなかったの?じゃあどこに?」
QS世界大学ランキングで、帝都大学は今年11位だった。
しかし帝都大学の物理学、自動制御工学などいくつかの専攻は世界トップクラスだ。
基本的に全国各地の高校トップの生徒たちは、帝都大学に進学する。
しかも名誉教授が直接招待したのだ。一度帝都大学に入れば、博士号の資格は確実だった。
「彼はノートン大学に行きました。向こうも彼を重視していて、専用機で送迎したほどです」内山教授は首を振って笑った。「他の大学なら、帝都大学も争ったでしょうが」
茹子は震え、思わず息を呑んだ。
ノートン大学!
行きたくても行けない場所だ。
三人が食事を終えると、茹子は月咲が作ったプログラムを内山教授に渡した。
内山教授はそれを見て言った。「確かに良いですね。ただ明らかに経験が少ないので、もっと練習が必要です」
彼は自分の名刺を置いて言った。「来年の3月にコンピューター学科で面接があります。その時に来るのを忘れないでください」
茹子はこんなにスムーズに事が運ぶとは思っていなかったので、とても喜んだ。「内山教授、ありがとうございます」
原田家の若い世代も勉強は悪くないが、プログラミングの才能はない。
内山教授はうなずき、公文書かばんを持って立ち去った。