350 これは金主パパ!【3更】

田中梨花は天行エンターテイメントのマネージャーで、かつて国際的な映画俳優を育て上げたことがある。

しかし、その国際的な映画俳優が天行エンターテイメントとの契約を解除した後、梨花の手元には看板となるアーティストが一人もいなくなり、最も実力のある者でも二線級のスターに過ぎず、一時は谷底に落ちた。

今年になって、梨花は葉山希子という新人を育て上げた。

希子は庄司曜之と『粉裝スパイ』を撮り終えた後、一躍有名になり、今や人気絶頂の女性タレントとなり、ファンも数え切れないほどだ。

梨花の天行エンターテイメント内での地位も、自然と上昇し、多くのアーティストが彼女の下で契約したいと思うようになった。

希子は今や人気絶頂で、オファーが途切れることなく、梨花が心配する必要はまったくない。

彼女はいくつかの新人を選び、『青春202』に参加させた。

『青春202』のオーディションが始まった頃から、梨花は雲井和月に注目していた。

芸能界には美人は多く、和月より美しい人も大勢いる。

しかし実力のある若者は、確かに今は少なくなってきている。

曜之はその特例だ。

梨花は迷わず和月に連絡を取り、彼女と契約しようとした。

何度も試みたが、断られた。

良い素材を自分の手元に置けないなら、梨花は和月がライバル会社に入ることも許さなかった。

さもなければ和月の実力で、デビューすれば間違いなく芸能界の新たなトップスターになるだろう。

今のうちに、彼女はまだ和月を抑え込むことができる。

歌唱面接の終了まであと5分、梨花は音楽指導者の一人に声をかけ、本来和月に割り当てられていた時間を使い切るよう頼んだ。

この音楽指導者とは深い付き合いがあり、こうすれば和月の歌唱部分はゼロ点になる。

たとえ和月のダンスが満点を取っても、彼女が連れてきた参加者には敵わない。

彼女はただ和月を圧迫し、追い詰めたいのだ。

そうすれば、和月は彼女と契約するか、芸能界から出ていくしかなくなる。歌もダンスも諦めざるを得なくなる。

和月は梨花を無視し、携帯を取り出して勝山子衿に見せるためにメッセージを打った。

【お姉さん、大丈夫です。】

【彼らはみんな下手くそだから、私はダンスだけでもトップ10に入れます。】

子衿は少し黙り込んだ。