しかし、ベテランHRとしての佐藤若菜は、彼の目に一瞬よぎった光から、満足と賞賛の意味を読み取った。
少し間を置いて、中村達也はペンを置き、続けて尋ねた。「早川さんは、HR部門が企業内でどのような地位と役割を持つと思いますか?」
若菜は心の中で思った。もう少し創造的な質問はできないのかしら。HRの会社での地位は各企業によって異なるし、同じ企業でも発展段階によって違う。この回答があなたにとって意味があるの?
はぁ、多くの企業が採用時にこういう質問をするけど、実際はあなたの考えなんて重要じゃない。会社がどう考え、その考えをHR担当者の頭に植え付け、それに同意させればいいだけ。みんな専門的なふりをした質問ばかり!
でも、やっぱり答えなきゃね!
若菜は穏やかな微笑みを保ちながら、落ち着いた口調で語り始めた。「企業の急成長段階では、HR部門はビジネスサポート部門です。企業の転換・変革期には、HR部門は戦略的パートナーとなります。そして支社では、HR部門はビジネスサポートと同時にプロセス監視の役割も果たします」
中村達也は軽く頷き、隣のヘッドハンターのミッキーと小声で意見を交換した後、専門的な質問と実務的な質問をいくつか尋ねてから、若菜に微笑みながら言った。「もし会社が早川さんを適任と判断し、早川さんもDFを選んでくださるなら、いつ頃から勤務可能でしょうか?」
若菜はこの質問が出れば、70%の確率で採用が決まったことを意味すると知っていた。残りの30%は、この採用マネージャーが上層部に報告し、承認を待つか、もしくはより上位の人物との面接がまだ必要な場合だ!
「1ヶ月後からです!」若菜はまだ1ヶ月の時間が必要だった。斎藤氏の注文納期問題の解決策を出すため、そして結婚式の準備のためにも。
葉山淑恵の話によると、盛大に挙げたいようだ。そのことを考えると、若菜は少し頭が痛くなった。帰ったら遥と相談しなければ。盛大にやると、将来離婚する時に面倒になる。
「わかりました。今日の面談情報を中部大区総支配人と本社HRに報告します。その後、佐藤博社から早川さんにご連絡します。今日はお時間をいただきありがとうございました。失礼します」中村達也とヘッドハンターは一緒に立ち上がり、礼儀正しく彼女に手を差し出した。