第60章 逃げられるのか(1)

ここまで話すと、元々柔らかだった表情が厳しくなり、田中蕎子にさらに話す機会を与えず、続けて言った。「面接結果が出るまで、管理部門のすべての申請について、梅田素子（営業管理アシスタント）は必ず私に意見と理由を提出すること。なければ一切承認しない。営業部から問い合わせがあれば、あなたが責任を持って説明すること！」

「え？」ずっと頭を下げてメモを取っていた梅田素子は、矛先が自分に向けられるとは思わず、急に顔を上げ、困惑した表情で佐藤若菜を見た。若菜の表情が断固としているのを見て、再び頭を下げるしかなかった。

彼女はこれまで営業部の管理申請を集計するだけで、蕎子が直接営業部の責任者と承認について話し合っていた。今や、承認されなければ彼女の責任になるというわけだ！

データ処理だけが得意な彼女にとって、これは災難的な変化だった——黒縁メガネをかけ、お団子ヘアの少女は、ペンを口に咥えながら、深刻な表情を浮かべていた。

若菜は彼女をさらりと見て、続けた。「蕎子の休暇中、通常業務は甘美が代行し、部内のコミュニケーションは直接行い、甘美を介する必要はない。これまで蕎子が承認していた人事関連の申請はすべて高橋健二（報酬・業績管理主任）が意見を出し、その後私が承認する。」

蕎子は冷静な表情の健二と、少し不安そうな甘美を見て、彼女たちをにらみつけた。自分が休暇を取ることで、彼女たちに都合のいい役割が回ってきたというわけだ！

若菜は全員の顔を軽く見回してから、会議の終了を宣言した。

彼女は本当に彼らの意見を必要としているわけではなく、彼らが持つ情報と態度を知りたかったのだ！態度に加えて能力があれば、もちろんさらに良い！

一見何気ない配置で、彼女たちが団結して非暴力的な非協力を示そうという願望を打ち砕いた。職場では給料を払うのは社長であり、誰がそんなに馬鹿げた義理立てをするだろうか？

「若菜、退社した？会社の下にいるよ！」5時半、若菜がまだ田中大樹のオフィスにいると、斎藤遥の電話が時間通りにかかってきた。

若菜は心の中で目を回した。この男は何をしているんだ？模範的な夫を演じているつもり？必要ある？

「ちょっと待って、すぐ下りるから！」若菜は初日から同僚に彼のスター顔を見せたくなかった——派手すぎるし、わざとらしい！