第281章 男と女と子供(3)

斎藤遥はドアが開くのを見ると、彼女と言葉を交わすこともなく、中へ駆け込んだ。

「佐藤若菜！」長い腕で再び悲鳴を上げ始めた女性を抱き寄せ、心配そうに彼女を抱きしめた——あまりの痛みで顔をしかめ、お腹を抱えて丸くなったその小さな顔、乱れた髪と青白い顔色、これが彼の記憶の中の若菜だろうか？

どこにあの威厳があるのか？どこにあの強さの欠片があるのか？美しさすら感じられない！

「若菜、ごめん、遅れてしまった」遥は彼女を抱きしめながら心配そうに言った。

「遥、死ぬほど痛いわ！」若菜は両手で彼の腕をしっかりと掴み、叫びながら言った。

「患者さんのご家族ですか？奥様は帝王切開が必要です。手術同意書にサインをお願いします。サインの前に各項目をよくお読みください」医師は手術同意書を遥に手渡した。

「私はもう見たわ、どこの病院も同じような条項よ、そのままサインして！もう見なくていいから。あぁ、痛い！」若菜は息も絶え絶えに遥に言った。

確かに、世の中の手術同意書はどれも似たようなもので、麻酔のリスクや分娩中の予期せぬ事態など、医学に詳しくない人が読めば半分死ぬほど怖がるようなことがたくさん書かれている！

だから早くサインしてほしかったのだ。

「ああ」遥はペンを取り、さっとサインをし、医師から控えを一部もらうことも忘れなかった。それをポケットに入れ、後で調べておこうと思った。

「若菜、大丈夫だよ、僕がここにいるから！」遥は彼女をしっかり抱きしめ、痛みで苦しむ姿を見て、代わりに痛みを引き受けたいと思った。

VIP個室病室では、すでに洗われ包まれた赤ちゃんが母親の隣に置かれていた。ピンク色の小さな顔、軽い呼吸と口から出る泡、本当に可愛らしかった。

麻酔の効果が切れた後も、若菜はまだ眠っていた。汗で濡れた髪が顔に張り付き、疲れて弱々しく見えた。

「若菜、もう二度と君を解剖されるカエルのように手術台に寝かせたくない！これからもう子供は作らないよ！」遥はベッドの横に座り、若菜の手をしっかりと握りながら、眠る母子を見つめて小声で独り言を言った。

彼の言葉を聞いたかのように、隣の小さな赤ちゃんは抗議するように小さな腕を伸ばし、小さな足を蹴り、「みゅう」と一声上げた後、また泡を吹きながら眠りについた。