第316章 相性が悪い(3)

「父さん、彼が正当な経営をしているなら、私は何も強制したり譲ったりする必要はありません。でも、もし彼がまだ卑劣な手段を使うなら、いつも譲るわけにはいかないでしょう。それに、企業は私一人のものではなく、多くの職業経営者もいます。市場競争の中では、譲りたくても譲れないこともあります。機会があれば、彼に忠告してください。人として、自分に余地を残しておいた方がいいと。やりすぎれば、誰にとっても良くありません」斎藤蓮の要求に対して、斎藤遥は聞いて不快だった。

兄弟として、助けるべきこと、支えるべきこと、気にかけるべきことなら、彼は問題ないのだ。

しかし企業の責任者として、彼は企業の存続と発展に責任を持たなければならない。行動すべき時には、決して手加減はしないだろう。

「父さんは君を困らせているのは分かっている。自分で判断してくれ。疲れたから、先に休むよ」蓮は重々しく彼を見つめ、彼の返答に明らかに満足していなかったが、それ以上は何も言わず、テーブルからタバコを取って一人で階段を上がっていった。

いつもバランスを重視していた彼だが、多くのことをコントロールできなくなった今、バランスを取ることは難しくなっていた。

「お母さん、直哉が眠くなったから、私たちも帰ります」遥は蓮が暗い表情で階段を上がるのを見て、心中穏やかではなかった。息子が佐藤若菜の腕の中で目を閉じているのを見て、若菜から息子を受け取り、立ち上がって帰ろうとした。

「お見送りするわ」葉山淑恵は立ち上がって遥の隣に立ち、彼と一緒に外へ向かった。

「お父さんの言うことは聞き流せばいいのよ。どうするかはあなたの判断で、わざわざ彼を不機嫌にする必要はないでしょう」淑恵は遥に言った。

「何を言っても父さんは不機嫌になるでしょう。前回の件では、もう手を引くよう強制されました。それに、マーケティングに関しては、空也の能力は私より上です。彼が企業競争から斎藤氏を攻撃しようとすれば、私が全力で対応しても苦戦するでしょう。どうやって譲れるというのですか?父さんは心の中でよく分かっているはずです」遥は淡々と言った。

彼は母親が父親の気分を害したくないことを知っていたが、実際には父親はよく分かっていて、ここで言葉を残しておけば、たとえ態度が強硬でも、実際に行動する時には考慮せざるを得なくなるだろう。