第19章 冷川宴が愛する人はずっと私

林悠は金田鎖の家を出たが、民政局には行かず、バルイに向かった。

彼女は会社のビルの下で、林美芝を止めた。

林美芝はいつものように完璧なメイクをし、8センチのハイヒールを履いていた。

林悠を見ても、彼女は平然とした表情で「島子、どうしたの？利田部長を探してるの？」と言った。

「あなたを探してたの！」林悠は単刀直入に言った。

「私を？」林美芝は少し驚いたような顔をした。「昨日のことについて？島子、誤解してるみたいだけど…」

「昨日のことじゃない」林悠は彼女の言葉を遮った。「あの絵のことよ」

「今すぐ審査委員会と会社に、あなたが盗作したことを認めなさい」

林美芝の顔から笑顔が消えた。「島子、何の絵？何の盗作？何を言ってるのか分からないわ」

林悠は目を見開いて驚いた。林美芝がまさか今になって認めないとは思わなかった。

林美芝は階段の上から、見下ろすように林悠を見た。

「島子、あなたが会社に戻りたいのは分かるわ。私は力を尽くして助けるつもりよ。でも、根拠のない罪は…私には背負えないわ」

「林美芝！」林悠は呆れ果てた。「恥を知らないの？」

林美芝は相変わらず平然としていた。「島子、あなたは私の従妹だから、私はずっと我慢してきたの。もしこれ以上騒ぎ立てるなら、容赦しないわよ」

「時間がないから、仕事に戻るわ」彼女は振り返って立ち去ろうとした。

「待って！」林悠は彼女を呼び止めた。

林美芝は振り返り、辛抱強く彼女を見た。

林悠は携帯を取り出し、冷川宴に電話をかけた。

「知らないでしょうけど、冷川宴は今日民政局で離婚する約束をしたの。彼はもう待ってるわ」

林美芝は瞬時に拳を握りしめた。「林悠！」

電話がつながった。

「どこにいる？」冷川宴の冷たい声が響いた。

「冷川宴、考え直したわ」

「何だって？俺を弄んでるのか？」

「あなたは私と離婚して、林美芝と結婚したいんでしょ？言っておくけど、それは夢のまた夢よ。私は離婚に同意しない。あなたたち不幸なカップルが、一生一緒になれないようにしてやるわ」

冷川宴が罵る前に、林悠は先に電話を切った。

林美芝の顔が一瞬で醜く歪むのを見て、彼女はやっと少し気が晴れた。

これが彼女の唯一の武器だった。

林美芝がこれほど彼女を陥れ、害したのだから、彼女も相手を苦しめずにはいられなかった。