翌日、林悠の調子は良かった。
心の底から本当に諦めたとき、むしろ全身が軽くなったのだ。
出勤の途中、彼女は冷川宴にメッセージを送った。
【離婚に同意するわ。お金はどうでもいい、手ぶらで出て行ってもいい。別荘はいらない。今夜仕事が終わったら荷物を取りに行くわ。】
二人の思い出が詰まった場所は、彼女一人にとっては牢獄に過ぎなかった。
【協議書を作成して民政局に持って行って。私がサインしたら手続きを済ませましょう。】
文面からは完全に急いでいる様子が伺えた。
冷川宴がそのメッセージを見たとき、胸の中の怒りが爆発しそうになった。
この女は外で誰かと一夜を過ごしただけで、こんなにも急いでこの結婚から逃れたいのか?
愛だの、罪悪感だの、全て嘘じゃないか!
林悠が会社に着くと、二つの大きなニュースを聞いた。
一つ目は、適切なプロジェクトマネージャーが見つかるまで、彼らのチームは一時的に林美芝が管理すること。
二つ目は、バルイの年次ショーの日程が決まり、それが一ヶ月後だということだった。
最初のニュースは皆を少し落胆させたが、二つ目のニュースは興奮せずにはいられないものだった。
「島子、」周防爽子は朝からずっと興奮していた。「私たちの会社のショーには国内外の多くのブランドや、顔の利く大物たちが招待されるのよ。」
彼女は憧れの表情で言った。「もしショーで輝くことができれば、ブランドと協力するチャンスがあるかもしれない。高級ブランドとさえ可能性があるわ。」
林悠は考え深げにうなずいた。
「島子、これは私たちの業界で百年に一度のチャンスよ。バルイでしか得られないものなの。」
林悠は利田艶のことを思い出した。これが利田艶が彼女にバルイに残るよう勧めた理由だと分かった。
朝のミーティングで、林美芝が現れた。
「年次ショーのこと、みんな知ってるわね?皆さんには本当の実力を発揮してほしいわ。」
彼女の視線が林悠の顔をさっと通り過ぎた。
「今回のショーでは、会社の四つのデザイナーグループから、各グループ二人だけが参加できます。」
「え?なぜ?」
皆はすぐに不満の声を上げた。
「例年は全員が参加できたじゃないですか?」
林美芝は咳払いをした。「今年、私たちバルイは高級路線、精品路線を打ち出します。希少価値、分かりますか?」