冷川宴は通路の入り口に立っていた。
彼は林悠と裴田優行が前後してトイレに行くのを見て、何かに取り憑かれたように後をついていった。
彼の背後には喧騒の音楽、目の前には男女の絡み合う光景があった。
彼は即座に身を翻して立ち去るべきだと分かっていたが、足は釘付けになったようだった。
「冷川宴、助けて!助けて!」
林悠はまだ必死に叫んでいたが、近くの強い光のせいで冷川宴の表情を見ることができなかった。
助け...て?
冷川宴は何か違和感を覚えた。彼が一歩踏み出した瞬間、誰かに腕を掴まれた。
「宴、どうしてここにいるの?」
林美芝は何気なく通路の中を覗き込むと、すぐに目を手で覆った。
「宴、戻りましょう、見ないで。」
林悠は冷川宴が連れ去られるのを目の当たりにした。
彼女の涙があふれ出し、瞬く間に人形のように操られる存在になった。