第32章 この結婚は本当に吐き気がする

冷川宴は通路の入り口に立っていた。

彼は林悠と裴田優行が前後してトイレに行くのを見て、何かに取り憑かれたように後をついていった。

彼の背後には喧騒の音楽、目の前には男女の絡み合う光景があった。

彼は即座に身を翻して立ち去るべきだと分かっていたが、足は釘付けになったようだった。

「冷川宴、助けて!助けて!」

林悠はまだ必死に叫んでいたが、近くの強い光のせいで冷川宴の表情を見ることができなかった。

助け...て?

冷川宴は何か違和感を覚えた。彼が一歩踏み出した瞬間、誰かに腕を掴まれた。

「宴、どうしてここにいるの?」

林美芝は何気なく通路の中を覗き込むと、すぐに目を手で覆った。

「宴、戻りましょう、見ないで。」

林悠は冷川宴が連れ去られるのを目の当たりにした。

彼女の涙があふれ出し、瞬く間に人形のように操られる存在になった。