第40章 本当の策略家は彼女ではなかった

林美芝は黙って黄田珠美を見つめていた。

黄田珠美はためらいながら口を開いた。「美芝、もしかして島子は三叔父さん家の子じゃないんじゃないかしら？」

やはり黄田珠美は疑いを持ち始めていた。

「そんなわけないでしょ？」林美芝は呆れた顔をした。「ママ、変なこと考えないで。三叔父さんと三叔母さんはもともと信頼できない人たちだし、それに島子はいつもトラブルを起こすから、彼らが島子に冷たくしても仕方ないわ」

「あなたが母親になったら分かるわよ」黄田珠美はそっとため息をついた。「たとえ子どもがどんな大きな過ちを犯しても、母親はただ一緒に償おうとするものなの」

「でも...」彼女は首を振った。「たぶん私の考えすぎね。私と淑美は同じ日に出産したんだから、島子が淑美の子じゃないなんてことあるわけないわ」

林美芝は胸がドキドキして、黄田珠美がそれ以上話さないのを見て、やっと安堵のため息をついた。

彼女と林悠の間のもつれは早く終わらせなければならない。さもないと、余計な問題が生じてしまう。

利田艶と別れた後、林悠は冷川家に戻った。

「奥様？」岡山雲子は彼女を見て喜色満面だった。「旦那様と仲直りされたんですか？」

林悠は苦笑いして首を振った。「旦那様はお帰りになっていますか？」

「まだです。でもこの数日間、旦那様はここに泊まっておられます」岡山雲子は林悠の手首に気づいた。「奥様、怪我をされたんですか？」

「大したことないわ」林悠はソファに座り、冷川宴に電話をかけた。

彼女は冷川宴が言った2年前のことについて、はっきりさせたかった。

彼女の第六感が告げていた。林美芝に一度だけでなく、何度も騙されていたのだと。

以前にも、きっとあったはずだ。

電話はすぐにつながった。

「いつ手続きに行くんだ？」

冷川宴の冷たい声が聞こえてきた。まるで二人の間にはこの一件しか残っていないかのように。

「家にいるわ。今すぐ帰ってきて」

「また何か企んでるのか？」

「30分以内に帰ってこないなら、私は消えるわ」

林悠はそう言って電話を切った。

案の定、30分も経たないうちに、冷川宴は冷川家のリビングに現れ、冷ややかに林悠の前に立っていた。

彼はテーブルに『離婚協議書』を投げた。

「さっさとサインして、明日手続きに行こう」