林悠は翌日、朝食を済ませると病院へ向かった。
黄田珠美がどんな人であれ、林美芝に対する彼女の態度には、いつも文句のつけようがなかった。
「おばさん、調子はどうですか?」
林悠は黄田珠美の病状について尋ねたが、彼女はいつも大したことはないと言うばかりだった。それなのに、こんなに長く入院していた。
「大したことはないわ」
黄田珠美は少し口角を引きつらせた。彼女は林悠の包帯で巻かれた右手首を見ると、瞬く間に目が赤くなった。
「こっちに来て、おばさんにその手を見せてごらん」
彼女は鼻をすすり、なんとか感情を抑えようとした。
「もう痛くありませんよ」
林悠は素直に近づき、右手を黄田珠美の手の上に置いた。
「数日で抜糸できますから」
彼女は笑いながら言ったが、黄田珠美の目に浮かぶ心配そうな表情に少し辛くなった。
もし黄田珠美が自分の母親だったら...どんなに良かっただろう。
「医者は何て言ったの?今後の生活に影響はある?」
「ありません」林悠は首を振った。
「嘘ついてるでしょ?」黄田珠美の涙はもう抑えられなかった。「きちんと治療しないと、もう絵が描けなくなるんじゃないの?」
林悠は胸が痛んだ。「いとこが...私を呼ぶように頼んだんですか?」
黄田珠美はうなずいた。
来る前から、林悠は黄田珠美が林美芝に頼まれたのだろうと予想していた。
しかし今、それが確認されると、林悠はやはり抑えきれない悲しみを感じた。
結局のところ、林美芝こそが黄田珠美の娘なのだ。世の中に藤堂淑美のような母親がどれだけいるだろうか?
林美芝は本当に恵まれているとしか言いようがない。
林悠は立ち上がり、帰る準備をした。「おばさん、今日は他の用事があるので、先に帰ります」
「待って!」黄田珠美は林悠の腕をつかんだ。「おばさんに怒ってるの?」
彼女は、林悠と林美芝の関係がこれほど悪化していることを知らなかった。
「いいえ」林悠は首を振った。「おばさんはいとこのお母さんですから、いとこを助けたいと思うのは当然です」
「私が美芝を助けていると思うの?」黄田珠美は違和感を察知した。「どうしてそう思うの?」
林悠はためらった後、「何でもありません。おばさん、ゆっくり休んでください」
彼女はそれらのことを話しても、黄田珠美は信じないだろうと思った。