冷川宴が去った後、利田燃がすぐにやって来た。
林悠は冷川お爺さんとしばらく湖畔で過ごした後、帰ることにした。
道中、お爺さんは元気がなく、来た時の興奮は完全に消えていた。
「お爺さん」林悠はわざと彼を喜ばせようとした。「今日は本当にお爺さんのおかげで、久しぶりにこんなに楽しい時間を過ごせました」
冷川お爺さんは振り向いて彼女を見つめ、心配そうな表情で「本当に楽しかったのか?」と尋ねた。
林悠は真剣に頷いた。
この一年間、旅行はおろか、冷川宴とこんなにリラックスして食事をすることさえなかった。
「あの小僧が途中で逃げ出したのに?」冷川お爺さんは考えれば考えるほど腹が立ち、声のトーンも強くなった。
「大丈夫です」林悠は口元を引きつらせた。「時には、結末はそれほど重要ではないんです。過程を楽しめたなら、それで十分満足です」
「馬鹿な子だ」お爺さんは心配そうに林悠の頭を撫でた。
家に戻ると、陣内冷子はすでに険しい顔で玄関で待っていた。
利田燃が冷川お爺さんを背負おうとしたが、お爺さんに拒否され、結局彼と林悠が一緒にお爺さんを支えた。
「お爺さん、ゆっくり!」林悠は注意深く言った。
「何様のつもりなの?」陣内冷子は林悠を睨みつけた。「もしお爺さんに少しでも何かあったら...」
「私は何ともないじゃないか」冷川お爺さんは陣内冷子の言葉を遮った。
「何事も万が一が怖いのよ」陣内冷子は真剣な口調で言った。「お父さん、もう冒険できる年齢じゃないわ」
「何かあったら、お前の息子に言え」冷川お爺さんは堂々と言った。「お前の息子の意向だ」
「まさか?」陣内冷子は全く信じられなかった。「宴の性格は私が一番わかっているわ。彼がそんなことするはずがない」
冷川お爺さんは断固とした表情で「自分で聞いてみろ」と言った。
陣内冷子は林悠を見て「後で私の部屋に来なさい」と言った。
「だめだ」冷川お爺さんは林悠を徹底的に守った。「私は島子と話があるんだ。島子、お爺さんと一緒に上がろう」
陣内冷子は諦めた表情で「お父さん、彼女を甘やかし続けるのね。いつか後悔することになるわよ」
「そうだな」すでに階段を上っていた冷川お爺さんは立ち止まった。