第76章 何を聞いたとしても証拠はない

林悠はWeChatを受け取った後、急いで病院に向かったが、1階で林美芝に出くわすとは思わなかった。

「あなたまた何しに来たの?」林美芝は大敵に遭遇したかのように言った。

「あなたには関係ないわ」林悠は相手にせず、足早に歩いた。

しかし林美芝は疑念を抱き、しつこくついてきた。「また父に殴られたいの?」

林悠は冷たい目で見返した。「心配しないで、叔母さんに会いに来たわけじゃないから」

「じゃあ冷川お爺さんに会いに来たの?」林美芝は嘲笑うように口角を歪めた。「林悠、あなた恥知らずね?冷川家の者はあなたを歓迎してないのに、厚かましく近づくの?」

林悠は立ち止まり、怒りの目で振り返った。「林美芝、私が病院に来たのはお爺さんのためじゃない。秋山看護師が私に用があるって」

彼女はうんざりして言った。「だから、もう付いてこないでくれる?」

秋山看護師?

林美芝は全身に警戒心が走った。彼女はすぐに数歩前に出て、林悠を遮った。

「母は目を覚ましたわ」

「本当?」林悠は驚きと喜びの表情を見せた。

林美芝はうなずいた。「母があなたに会いたがってる」

彼女は手に持っていた昼食を林悠に渡した。「私の代わりに持っていってくれる?」

林悠はためらいながらも、林美芝の態度の急変に違和感を覚えた。

「父は朝から何も食べてなくて待ってるから、早く行って」林美芝は振り返り、林悠が断る隙を与えずに立ち去った。

林悠は迷ったが、黄田珠美に会いたいし、林深にも説明したかった。

結局、まず黄田珠美に会い、それから秋山看護師を探すことにした。

病室の前で、林悠はドアをノックした。

帰国後、林深は昼夜問わず黄田珠美の看病をしていたが、彼女はずっと目覚めなかった。

林美芝は黄田珠美が入院してからの出来事を多く語り、林悠が何度も黄田珠美を怒らせて気絶させたと話した。

そして最後には、林悠が黄田珠美の目の前で死ねと呪ったという。

林深は林悠を憎んでいた。黄田珠美がどれほど林悠を好きだったか、そして彼自身も林悠に親しみを感じていたからだ。

ノックの音を聞いて振り返ると、窓から林悠の顔が見えた。

彼は怒りに震え、勢いよくドアを開けて出て行った。

「何しに来た?」開口一番、恐ろしいほど低い声で言った。