第191章 林悠を相続人にさせるわけにはいかない

冷川宴が部屋を出た後、彼は階下の台所へ向かった。

陣内冷子はすぐに彼の顔がおかしいことに気づき、声を低くして尋ねた。「どうしたの？」

「何でもないよ」冷川宴は陣内冷子の審査するような視線を避け、ポケットに手を入れたまま食器棚に寄りかかった。

彼は今、自分の部屋に戻りたくもなければ、リビングに行きたくもなく、ここに隠れるしかなかった。

陣内冷子は眉をしかめた。「お兄さんにやられたの？」

この家では、冷川峰以外に冷川宴に手を出す勇気のある人はいなかった。

冷川宴は黙り込んだ後、「関わらないで」と言った。

「何をしたの？」陣内冷子はますます不思議に思った。以前の冷川宴はこの兄に対してこんな態度ではなかった。明らかに冷川宴は自分が悪いと思っているようだった。

冷川宴は少しイライラして、「もう聞かないでくれる？」

「林悠のことなの？」陣内冷子は追及をやめなかった。

冷川宴はそのまま出て行った。

陣内冷子は自分の推測が正しいことを知り、ため息をついて、無力に頭を振った。

冷川峰はすでにリビングにいて、冷川天晴たちが話している中、彼一人がソファに座ってスマホをいじり、何かを集中して見ていた。

冷川宴が彼の後ろを通りかかった時、何気なく一瞥すると、冷川峰がベビー用品を見ていることに気づいた。

彼はその場で凍りついたように立ち尽くし、全身が恍惚とした状態になった。

冷川峰は彼が後ろにいることに気づくと、すぐにスマホをしまい、立ち上がって林深たちの将棋を見に行った。

「宴、口元どうしたの？」林美芝が小走りで近づき、心配そうな顔で「誰かと喧嘩したの？」と尋ねた。

冷川宴が戻ってきた時はこんな様子ではなかった。これは今上の階で喧嘩したということ？

彼女は遠ざかる冷川峰を思案げに見た。冷川峰がやったの？

もし冷川峰なら、林美芝はすぐに林悠のことを思い出した。これは間違いなく林悠に関係している。

「大丈夫だよ」冷川宴は我に返り、さらにイライラした様子でソファに座り、一言も発しなかった。そのため林美芝たちも話しかけづらくなった。

林悠が下りてきた時、陣内冷子はようやく食事の準備ができたと告げた。

テーブルいっぱいの料理は非常に豪華で、色、香り、味すべてが揃い、見ただけで食欲をそそられた。