林悠を刺した男が捕まってから一時間後、藤堂淑美はその知らせを受けた。
「どうしてこんなことに?絶対に捕まらないって言ったじゃないの?」彼女は恐怖で体中が震え、携帯電話をまともに持てないほどだった。
「姉貴、俺たちは仲間を一人失ったんだ。お前に責任を問わないだけでも有難く思え」相手も明らかに怒っていた。「お前が関わったのがどんな人間か知ってるのか?捕まえに来たのは普通の警察じゃなかったぞ」
藤堂淑美の手のひらは汗でびっしょりだった。普通の警察じゃない?林悠のあの女、そんな人脈があるのか?
今はそんなことを考えている場合ではなかった。
相手は法外な要求をしてきた。「一千万だ。一度に振り込め。さもないと、俺の仲間が口を割ったら、お前は刑務所行きだぞ」
「一千万?正気じゃないわ!」藤堂淑美は罵声を浴びせた。「五百万で話がついたはずよ。一銭も追加しないわ」