第218章 林美芝、人として極めるべきではない

翌朝、林悠が起きると、新田露美子がリビングで電話をしているのが聞こえた。

「お母さん、焦らないで。私も方法を考えているから、手術費用はすぐに集めるわ」新田露美子の声は焦りに満ちていた。林悠が出てくるのを見ると、彼女は電話を切った。「じゃあ、また後で話すね」

林悠はしばらく考えてから、探るように尋ねた。「ご家族の手術ですか?」

「うん」新田露美子の目は少し赤くなっていた。彼女は無理に口角を上げて、「朝ごはん作ったから、洗顔したらすぐ食べましょう」と言った。

「ありがとう」林悠は簡単に洗面を済ませた。

テーブルの上の朝食はシンプルだったが、味は悪くなかった。しかし、新田露美子は明らかに食欲がなさそうだった。

「手術費用はあとどのくらい足りないの?」林悠から切り出した。知り合ってまだ数日だったが、新田露美子との相性が良いと感じ、助けたいと思った。

新田露美子はすぐに首を振った。「そんなに足りないわけじゃないの。私一人で何とかできるから、ありがとう」

「大丈夫よ、私は数万元持っているし、今は使わないから」林悠はそれでも助けたいと思った。

しかし新田露美子はやはり断った。「本当に大丈夫、ありがとう」

これが人と人との違いだ。新田露美子と階下の男性は、明らかに雲泥の差があった。

二人は一緒に朝食を食べ終えると、会社へ向かった。

この日は基本的に新田露美子が林悠を案内した。昼食時、林悠が新田露美子を食事に誘ったが、彼女はそれも断った。

林悠は新田露美子の食事がとても質素なことに気づいた。明らかにお金を節約していた。

この女性は本当に強情だ。家族の誰が手術を受けるのかも分からない。

夜、退社したときはすでに8時を過ぎていた。二人がアパートに戻り、3階に着くと、美智がまた防犯ドアの内側に立っていた。

林悠は新田露美子を見た。新田露美子がうなずいたので、彼女は鍵を取り出して防犯ドアを開けた。

「美智ちゃん、おばさんの家で少し遊ばない?」

「いいの?」美智は明らかに期待に満ちた表情だったが、他人に迷惑をかけることを恐れているようだった。

「もちろんよ、大歓迎だわ」林悠は笑顔で言った。

美智はこっそり新田露美子を見た。

「いいわよ、行きましょう。林おばさんに手を引いてもらって」新田露美子は微笑んだ。