冷川峰と深田確は澤田楠雄を保釈しに来た人を見て唖然とした。まさか林美芝だとは思わなかった。
「どうやら、島子を殺そうとしている人が誰なのか、明らかになったな」深田確は首を振った。「この女は本当に狂っている」
「まったく、しつこい奴だ」冷川峰は携帯を取り出し、こっそり澤田楠雄と林美芝が会っている写真を撮り、林悠に送った。
深田確は彼を笑った。「どうした?M国にいないふりをするのはやめたのか?」
冷川峰は言葉に詰まった。「林美芝が来たからには、島子は危険だ。そんなことを気にしている場合じゃない」
「まさか我らが隊長がこんな恋愛脳だったとはな」深田確は頭を振った。
冷川峰は彼を無視し、林悠にメッセージを送った。【男は澤田楠雄という。麻薬中毒者だ。深田によると君の階下に住んでいるらしい?以前から知っているのか?彼は林美芝とかなり親しいようだ】
林悠がそのメッセージを見たのは朝食中で、驚いて手に持っていた肉まんを落としてしまった。
【林美芝もM国に来ているの?】
【その男は澤田楠雄?冷川さん、確かですか?】
深田確は首を傾げて冷川峰の携帯を覗き込み、林悠の言葉遣いに敏感に反応した。
「『も』?どういう意味だ?他に誰か来ているのか?」
冷川峰は一瞬戸惑った。「もしかして島子は俺がここにいることを知っているのか?」
「それはないだろう」深田確は思い返してみて、林悠は知らないはずだと感じた。この「も」は、恐らく別の誰かを指しているのだろう。
しかしそれは重要ではなかったので、彼は冷川峰に追及するよう促さなかった。
冷川峰は直接二つ目の質問に答えた。【澤田楠雄だ。知り合いか?】
林悠はメッセージを見て箸を置いた。彼女は階下に住む貧しくだらしない男と、記憶の中の意気揚々とした澤田先輩を結びつけることができなかった。
「どうしてこうなったの?」彼女は思わずつぶやいた。「澤田先輩がどうしてこんな風になってしまったの?」
「誰?」新田露美子は混乱していた。
林悠はすぐに説明した。「知ってる?階下の男は澤田楠雄って言うんだけど、私の元校友なの。昔は学校の人気者だったのよ」
「あなた...確かなの?」新田露美子は頭をひねっても、階下の男と林悠の言う人物を結びつけることができなかった。