第271章 私自身も自分を許せない

アパートに戻って林悠と抱き合うまで、金田鎖はまるで夢を見ているような非現実感を覚えていた。

「言ったでしょ、絶対に上手くいくって」林悠は金田鎖のために喜んだ。

冷川廷深の愛を得られ、冷川家の人々にも受け入れられるなんて、本当におめでたいことだった。

おそらく以前の林悠は、この二つとも手に入れられなかったからこそ、特別に嬉しく思っていたのだろう。

「本当に予想外だったわ」金田鎖は興奮して目を赤くした。「こんなにスムーズにいくなんて思わなかった。冷川天晴さえあんなに大人しかったなんて、驚きだわ」

彼女は鼻をすすった。「まだ現実感がないの」

「まあ、冷川家の人に会えたし、これで一件落着ね」林悠は彼女に尋ねた。「あなたのお母さんには彼を会わせたの？」

金田鎖は首を振った。「私...もう少し待ちたいの。怖くて...」

「どんなことがあっても、婚約前には必ず会わせないと」林悠は慰めた。「おばさんは彼に対して怒りを感じるかもしれないけど、おばさんはあなたをとても愛しているから、あなた自身が望むなら、絶対に反対しないと思うわ」

金田鎖ももちろんそれはわかっていた。でも、陣内美玉が自分に失望するのではないかと常に恐れていた。

「うん、この数日のうちに、彼を連れて帰るわ」彼女は避けられないことを知っていた。

二人はもう少しおしゃべりをして、早めに寝た。

しかし翌日、林悠が仕事に出かける準備をしていたとき、誰かがドアをノックした。

「こんな早くに、誰かしら？」金田鎖はドアを開けに行き、声を張り上げた。「島子、もしかして兄さんが帰ってきたの？」

「それはないでしょ」林悠は小声でつぶやいた。「お兄さんは水曜日に帰ってくるって言ってたわ」

彼女は部屋で片付けをしていて、終わって出てきたとき、金田鎖がソファに静かに座っているのを見た。彼女の様子がどこかおかしかった。

「どうしたの？」林悠はバッグを置いて、金田鎖の隣に座った。「さっき誰が来たの？」

金田鎖は黙ったまま、茫然と空気を見つめていた。

林悠はテーブルに白い紙が置かれているのに気づき、身を屈めて取り上げた。それは妊娠検査の報告書だった。

そして報告書の名前は阿部軟子となっていた。

彼女は驚いて金田鎖を見た。「さっき阿部軟子が来たの？」

金田鎖はうなずいた。

「彼女、妊娠したの？」