第305章 冷川社長は確かに一流の心理医師を必要としている

林悠はようやく安心して眠りについた。金田鎖は冷川峰たちと一緒に部屋を出た。

しかし、ドアの前で思いがけず冷川廷深を見かけ、金田鎖は眉をひそめた。

「会いたくないなら無視すればいい」深田確は体を半分金田鎖の前に置き、冷川廷深に警戒の表情を向けた。「俺たちがいるから、何もできないよ」

「鎖、話があるんだ。たった5分でいい、5分だけくれ」冷川廷深は懇願するように金田鎖を見つめた。

目の前の冷川廷深は、かつての冷たく高貴な若旦那のイメージを完全に覆していた。無精ひげを生やし、元気のない様子で、10歳も年を取ったように見えた。

金田鎖には分かっていた。冷川お爺さんの死と、冷川天晴と林美芝の裏切りが、冷川廷深を苦しめていることを。

彼女は軽く深田確の肩をたたいた。「大丈夫よ。彼と少し話すから、あなたたちは1階で待っていて」

二人はうなずき、一緒に立ち去った。

冷川廷深の横を通り過ぎる時、冷川峰は足を止め、低い声で忠告した。「叔父さん、もう間違いを犯さないでくれ」

二人が去った後、金田鎖は少し離れた椅子に座り、冷川廷深を遠くから見つめた。「話して」

冷川廷深は頭を垂れ、ゆっくりと近づいてきた。そして突然、ドシンと床にひざまずいた。

金田鎖は驚いて立ち上がり、冷川廷深を助け起こそうとしたが、自制して、あきらめたように言った。「何をしているの？立って話して」

「立ち上がらない。今回の過ちがどれほど酷いものか分かっている。簡単には許してくれないだろう」冷川廷深はうめき声を上げて泣き始めた。「鎖、本当に間違いを認めている。もう一度チャンスをくれないか？一緒に子供を産んで、育てようよ」

子供の話を聞いた金田鎖は怒りと共に笑った。見下ろすように彼に尋ねた。「そんなにこの子が大事なの？」

「もちろんだ、僕たちの子供だよ。大事に決まっているだろう？」冷川廷深は切実に言った。彼は金田鎖の足元まで膝で這い寄り、彼女のズボンの裾を引っ張った。「鎖、許してくれ。子供を残して、一緒に育てよう」

金田鎖は考え深げにうなずいた。「いいわ、決めたわ。子供は残す」

「本当に？」冷川廷深は自分の耳を疑った。彼は涙を拭いながら、もう一度尋ねた。「鎖、聞き間違いじゃないよね？本当に僕を許してくれる？子供を残してくれる？」

「そうよ、子供は残すわ」金田鎖はもう一度繰り返した。