第323章 利田燃が現れず電話も繋がらない

約束の日が来て、冷川宴は朝に利田燃から電話を受けた。

「冷川社長、私は今M国にいます。すぐに飛行機で帰ります。調査はほぼ終わりました」

「わかった」冷川宴は少し驚いた。利田燃がわざわざM国まで行っていたとは思わなかった。彼はさらに付け加えた。「気をつけて、待っているよ」

「冷川社長」利田燃は手の中の書類袋を見て、「着陸したらすぐに別荘に伺います。あなたは...心の準備をしておいてください」

「わかった」冷川宴は電話を切ると、胸の辺りに微かな不快感を覚えた。

彼は日付を確認した。離婚裁判の開廷は二日後だ。なぜか間に合うような気がした。

この一日、冷川宴はかつてないほど長く感じた。彼はすべての仕事をキャンセルし、実家に戻って陣内冷子と予安と半日ほど過ごした後、別荘に戻って待つ準備をした。

陣内冷子は不思議そうに尋ねた。「今日は仕事がないんでしょう？何を急いで帰るの？もっと子供と過ごしたら？」

予安が生まれてから、かつてのキャリアウーマンだった陣内冷子は大きく変わったようだ。家族の絆を重視し始め、冷川宴が仕事ばかりで息子と過ごす時間が少ないと不満を言うようになった。

「とても重要な用事がある」冷川宴は上着を腕にかけ、予安に手を振ると、大股で出て行った。

彼には予感があった。利田燃が持ち帰るものは、きっと彼を驚かせるだろうと。

別荘に戻ると、冷川宴の気持ちは妙にイライラしていた。ここはかつて彼と林悠の家だった。林悠が引っ越した後、彼がここに戻る回数は数えるほどしかなかった。

「お帰りなさいませ」家政婦の岡山雲子は、この別荘の唯一の住人となっていた。

「ああ」冷川宴は上着を岡山雲子に手渡した。「今夜はここに泊まる。片付けたら帰っていいよ」

「はい、わかりました」岡山雲子はすぐに荷物をまとめ、急いで出て行った。

冷川宴は快適な部屋着に着替え、リビングに座った。M国からのフライトを確認すると、最も早いのは夜8時到着で、今からまだ4、5時間ある。

確かに彼は早く戻りすぎたようだ。一体何をそんなに急いでいるのだろう？

冷川宴は自分がすでに答えを知っているような気がした。彼は立ち上がり、庭園を歩き回った。その間、林美芝から夕食を一緒にどうかという電話があった。

「今日は用事があるから、また今度にしよう」

「わかったわ」