あっという間に、冷川宴と林美芝の結婚式の日がやってきた。
名古屋の初夏は、本来なら熱気に満ち溢れ華やかなはずだが、この日は霧雨が降り続き、空気は重く、人々を不快にさせていた。
冷川峰はまだM国から戻っておらず、深田確は美智を連れて基地に残っていた。
林悠と金田鎖は一緒に結婚式の会場へ向かい、林美芝の最後の姿を目撃する準備をしていた。
「深田先生は本当にすごいわね」道中、金田鎖は感心しきりだった。「美智が本当に来なくなるなんて」
最初、美智は結婚式に参加したいと強く主張していた。彼女は林美芝を直接指摘し、悪いママが倒れるのを見たかったのだ。
しかし、小さな子が深田確と一緒に基地に行った後、なんと考えを変えたのだった。
林悠は微笑んで言った。「来ないほうがいいわ。彼女は結局、林美芝の娘なんだから。ある種の場面は見ないほうがいいこともある」
「そうね」金田鎖はため息をついた。「でも、自分の母親が父親を殺すのを目の当たりにするよりも受け入れがたいことなんてないでしょうね」
林悠はしばらく黙った後、ゆっくりと口を開いた。「願わくば、深田確が本当に彼女を救ってくれることを」
二人は今日、黒い服装で来ていた。林悠は黒いミニドレスを着て、細くまっすぐな脚を見せ、知的で優雅な印象を与えていた。一方、金田鎖は黒いスーツ姿で、特に凛々しく颯爽としていた。
結婚式の日にこのような服装で現れた二人は、すぐに全ての人の視線を集めた。
「なぜ来たんだ?」思いがけず冷川宴と出くわした。彼は不機嫌そうな顔をしていた。「招待した覚えはないが」
「そう?でも招待状をもらったわよ」金田鎖は両手を広げた。彼らはすでに来ているのだから、冷川宴が追い出すとでも言うのだろうか?
予想外にも、冷川宴は本当に顔を曇らせ、彼らを追い出そうとした。彼は冷たく林悠を見つめ、「どこから招待状を手に入れたか知らないが、今すぐ出て行ってくれ」
林悠は金田鎖の手をぎゅっと握りしめた。「冷川宴、どうしてそんなことを言うの?私たちがここに来たのは、ただ…」
続く言葉は、彼女にはなかなか言い出せなかった。確かに、彼女たちが来たのは幸せを祝うためではなく、真実を暴くためだった。
冷川宴は彼女の言わなかった言葉を察したようで、視線をそらして言った。「必要ない」